スシロー営業利益7割減、30店舗新規出店するも5%減収

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※画像はイメージ

回転ずし店「スシロー」を運営するFOOD&LIFE COMPANIES(以下、スシロー)の2023年9月期第1四半期の営業利益が、前年同期間比7割減の15億7,000万円となりました。この期間にスシローは国内外に30店舗を新規出店し、3店舗を退店しています。出店数が退店数を大幅に上回っていますが、5.0%の減収となりました。

人件費や水道光熱費、地代家賃が利益を圧迫しているうえ、2022年10月の値上げ以降、客数が戻りません。減収の影響で減価償却費の負担も大きくなっています。今後はSNSでの迷惑動画が広まった影響も受ける可能性があり、収益の更なる悪化も懸念されます。

この記事では、以下の情報が得られます。

・スシロー全店と既存店の売上推移
・競合との客数の比較

新規出店効果が薄くなる最悪の状態に

スシローは2023年9月期の売上収益を前期比13.8%増の3,200億円、営業利益を同8.7%増の110億円と予想しています。売上収益は2桁増と強気の予想を出していますが、1Qは減収と出足から躓きました。

スシローは今期、国内のスシローブランドの店舗を18~22出店する計画を立てていました。2022年10月から12月までですでに8店舗を新規オープンしています。

※決算短信より

出店と閉店を含めた国内外の合計店舗数は、前年同期間と比べて27店舗増加しています。それでも減収という厳しい結果になりました。

減収要因は客数の減少によるものです。著しい客数減を招いたのは、2022年10月の値上げでした。下のグラフはスシローの国内スシローブランドの全店、既存店売上高の前年同月対比の推移です。

新規出店した店舗が含まれるため、全店の方が売上高は高くなります。スシロー全店の売上高は、コロナ禍の2022年1月でも100%を超えて好調に推移していました。その年の5月に114.0%という驚異的な数字を叩き出します。

しかし、2022年6月9日に1貫110円の「うに」がおとり広告に当たると、消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けて客数は失速。7月は全店の売上高が95%を下回ります。更に10月に値上げを実施すると、売上高は90%を下回るようになります。

※月次情報より

上のグラフを見ると、2022年6月までは全店と既存店(オープンから15か月目以降の店舗)の売上高に明確な差がついているのがわかります。平均で5.9ポイントの差が開いていました。しかし、値上げ実施後は2つの差がなくなり、3.4ポイントまで縮まっています。新規出店効果が薄れているのです。

しかも、既存店の客数が減って全体の売上高が下がっているため、増収への道が遠のいているのです。

かつて既存店の客数では競合を抑えて一人勝ちしていたスシローですが、今は見る影もありません。2023年1月の客数はかっぱ寿司が104.6%と好調。くら寿司はやや遅れをとって97.2%。スシローは88.9%で、90%台を回復していません。

売上が減少して減価償却費の負担が重荷に

回転寿司は原価率が高い傾向にあります。スシローの2023年9月期第1四半期の原価率は44.4%でした。しかし、食材は価格高騰の影響を受けておらず、むしろ価格が落ち着いて前年同期期間よりも利益を押し上げる要因になっています。

※決算説明資料より

減益の要因として大きかったのが、人件費、水道光熱費、減価償却費です。この中でも、減価償却費の影響は甚大でしょう。スシローは1Qに63億4,000万円の減価償却費を計上しています。前年同期間比21.1%の増加です。

売上高に占める減価償却費の割合は、2023年9月期第1四半期が9.3%。2022年9月期第1四半期が7.3%でした。出店してもそれだけの稼ぎが得られないため、償却負担が重くなっているのです。

更に店舗の収益性が悪化することでその資産額を減価する、減損損失を2023年9月期第1四半期に9億8,400万円計上しました。前年同期間は7億9,700万円でした。

減損損失を出すことで償却負担は軽くなりますが、新規出店しても売上高が伸びなければ償却負担が重くなり、減損リスクが高まります。中期的に客数が戻らなければ、スシローは出店計画を見直す必要が出るかもしれません。慎重なかじ取りが求められます。

しかも、スシローには投資ファンドの買収によって生じた無形資産であるのれんが303億7,100万円あります。客離れの長期化は無形資産の減損損失もあり得ます。

スシローはおとり広告で消費者からの信頼が揺らいだため、その巻き返しに注力していました。2022年11月からは、キャンペーンの目玉商品が、店舗にあるかどうかをホームページやアプリで事前に確認できる機能を実装。お詫びなどの謝罪対応以外に、顧客目線での具体的な対応策を進めていました。

※決算説明資料より

信頼回復の途中で突如として襲い掛かったのが、少年による醤油さしの炎上問題でした。少年は保護者とともに謝罪をしたものの、刑事・民事の両面から厳正に対処するとしています。信頼回復に務めていた道半ばであり、二度とこのような問題を発生させないためにも厳しい措置をとったのでしょう。

※「SNS で拡散されたスシロー店舗での迷惑行為に関するお知らせ」より

スシローは今回の問題で株価が下落し、時価総額170億円あまりが吹き飛びました。しかし、怖いのは集客への影響。仮に客離れが加速すると、営業赤字もあり得ます。固定資産の減損損失、無形固定資産の減損損失が重なると、数百億円単位の赤字がないわけではありません。

SNS上では、店舗を救済するために駆け付けたという投稿も見られます。炎上問題は2月以降の集客にどれほどの影響があるのか。スシローに正念場がやってきました。

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