飲食業界で倒産急増の懸念「支援金」などで2022年は最少に

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コロナ禍で苦境に陥っている飲食業界で、2022年の倒産件数が過去20年間で最少となったことが分かった。

東京商工リサーチ(東京都千代田区)によると、2022年の飲食業界の倒産(負債1000万円以上)件数は522件(前年比19.4%減)で、この20年では2004年の554件を下回り最少となった。

ただコロナ関連の倒産件数は前年よりも6.3%増加し319件に達しており、全体の61.1%(前年は46.2%)を占めた。

飲食業界では2020年に過去最多の842件の倒産を記録したあと、支援策が効き倒産は2年連続で減少したが、支援策の縮小や終了に伴い2022年11月から増加に転じている。新たな支援策などがなければ、2023年の倒産件数は急増する可能性がありそうだ。

好調だった持ち帰りや宅配では増加

2022年の飲食業界の倒産を業種別でみると「酒場、ビヤホール(居酒屋)」の120件(前年比21.0%減)が最多で、日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店を含む「専門料理店」の118件(同30.5%減)、「食堂、レストラン」の112件(同5.0%減)と続いた。

いずれも倒産件数は減少しているが、飲み会や接待の減少、コロナ禍の生活様式の変化などから客足が遠のいていることが予想される。

一方、中食需要を取り込んで好調だった「宅配飲食サービス業」は34件(同47.8%増)、「持ち帰り飲食サービス業」は20件(同25.0%増)と、こちらは倒産が大幅に増えた。

宅配や持ち帰り業態に参入した企業が増えたことで競合が激化したことが、倒産増加の一因とみられる。

原因別では「販売不振」の427件(同21.7%減)が最多だったが、「運転資金の欠乏」が前年度の4件から8件に倍増しており、支援策の終了や縮小の影響が現れたようだ。

形態別では、消滅型の「破産」の495件(同19.3%減)が最多となった。東京商工リサーチでは「コロナ禍の長期化で再建のめどが立たず、消滅型の倒産を選ぶ割合が上昇している」と分析している。

文:M&A Online編集部