日韓関係悪化で「ユニクロ」も営業減益に 半面韓国企業の買収には増加の兆しも

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アパレルブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング<9983>の2020年8月期の営業利益が、韓国での不買運動などの影響で2016年8月期以来4期ぶりに減益に陥る。

「コンフォートホテル」などを運営するグリーンズ<6547> も日韓関係悪化を理由に営業利益を当初予想より大幅に下方修正した。 

上場企業の業績に悪影響が広まりつつある日韓関係だが、一方で韓国企業を対象とした買収や出資に増加の兆しも見られる。2020年の日韓関係はどのような方向に進むのだろうか。 

当初予想より300億円営業減益

ファーストリテイリングは2020年1月9日に発表した2020年8月期の第1四半期決算で2020年8月期通期の業績予想を下方修正し、営業利益を当初の2750億円(前年度比6.7%増)から2450億円(同4.9%減)に引き下げた。 

減益となるのは為替差損や閉店損などが発生したことから前年度比22.6%の大幅営業減益となった2016年以来。今回は2019年7月から始まった韓国での不買運動の影響が大きく、2020年8月期第1四半期の韓国事業は大幅減収、営業赤字を余儀なくされた。 

ファーストリテイリングでは第1四半期(9月ー11月)と2019年12月の状況を踏まえ、通期でも韓国情勢の好転は見込めないと判断。さらに香港の状況なども考慮し、営業利益を当初予想比で300億円(10.9%減)引き下げた。 

「コンフォートホテル」などを運営するグリーンズは1月14日に、日韓関係の悪化に伴う訪日韓国人観光客の減少などを理由に2020 年 6 月期の業績予想を下方修正した。営業利益は前年度比61.5%減の9億3500万円にとどまる。 

上場企業の業績に日韓関係悪化の影響が今後どの程度、広がるのか。多くの上場企業が決算期としている3月期末に向け、関心が高まる。

2020年を占うポイントは次の韓国企業の買収時期か

 日韓関係の悪化に伴い上場企業の業績に暗い影が広がりつつある一方、2020年に入って、韓国企業を対象にした買収や出資に動きが見られるようになった。上場企業の適時開示情報を見ると、2019年に2件にとどまった日本企業による韓国企業の買収が、今年は早くも1件実現した。 

クリーク・アンド・リバー社<4763>、が1月9日に実施した持ち分法適用関連会社でテレビ局向け人材派遣の韓国CREEK&RIVER ENTERTAINMENT(CRE)の子会社化がそれ。CREが韓国エンタテインメント分野で培ってきた顧客網と連携する機会が増えてきたことから子会社化に踏み切った。 

このほかにもKDDI<9433>は1月8日にデータの自動匿名化技術を持つ韓国のDeeping Source Inc.に出資した。個人情報保護の動きが強まる一方、企業による合法的なデータ収集ニーズが増加傾向にある中、Deeping Sourceが持つ匿名化技術を用いれば、この両方を実現することができることから、資本提携によって両社が協力して新事業の創出を目指すことになった。

繊維商社のヤギ<7460>も1月14日に韓国Finetex EnE Inc.との間で、Finetex EnEが製造するナノファイバー製品のグローバル販売(韓国を除く)に関する契約を結んだのをはじめ、Finetex EnEへの出資に向けた交渉を始めた。 

このまま韓国企業を対象とした買収や出資は増え続けるだろうか。まずは日本企業による韓国企業の買収件数が2019年と並ぶ(2件)日がいつ訪れるかが、2020年を占うポイントとなりそうだ。

文:M&A Online編集部