食べるM&A 不二家のクリスマスケーキはコンビニで

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いよいよ12月。街はイルミネーションの光にあふれ、すっかりクリスマスモードに切り替わっています。クリスマスのスイーツといえばケーキですが、日本ではいつごろからクリスマスケーキを食べるようになったのでしょうか。

その歴史は意外と古く、1910(明治43)年に不二家がクリスマスケーキを販売したことに始まります。当時のクリスマスケーキは、プラムケーキに砂糖衣を塗って、銀玉をのせたようなシンプルなものでした。クリスマスケーキの定番ともいえるショートケーキタイプのものが登場したのは1922(大正11)年。本格的に家庭にも普及し始めたのは、戦後に入って原料となる砂糖や小麦粉の統制が廃止となった1950(昭和25)年~1951(昭和26)年ごろからで、生活様式の欧米化と共に急速に広まっていきました。

そんなクリスマスケーキの元祖ともいえる不二家のケーキは、今ではコンビニでも購入できます。美味しいケーキが手軽に買えるのは消費者にとって喜ばしいことですが、これは不二家にとっても大きなチャンスでした。

コンビニへの販路拡大の立役者は?

実は、そうした不二家のコンビニ進出の背景には山崎製パンの存在がありました。今年のセブンイレブンのクリスマスケーキカタログでも同じページに仲良く並んで紹介されています。

2007年1月、消費期限切れの原材料を使用していたことが発覚した不二家は信頼を失い、洋菓子製品の製造販売を休止。多くの店舗が閉店へと追い込まれました。3月頭から一般菓子、同月下旬からは洋菓子の販売を本格的に再開したものの、2007年3月期は66億5900万円、2008年3月期は106億円と巨額の営業損失を被りました。経営危機に陥った不二家は、2007年3月に山崎製パンと資本・業務提携を結び、4月には第三者割当増資を経て山崎製パンの持分法適用会社(当時の出資比率35%)に。さらに、2008年11月には再び第三者割当増資を実施して、山崎製パンの出資比率が51%に達し、同社の連結子会社となりました。

こうして山崎製パン傘下となったことで、不二家はこれまで自社ルートだけに頼っていた洋菓子の販売ルートを、山崎製パンが既に持っていたコンビニやスーパーへの販路を活用して拡大していくようになったのです。

そして2012年12月期には、販路拡大の成果もあったのか、売上高899億円(前期比2.6%増)、営業利益16億円(同54%増)となり、2005年3月期決算以来の復配を成し遂げました。

どんどん進化していくコンビニスイーツとの競争は終わりのない戦いかもしれませんが、少なくとも同じ土俵に乗ることはできたのではないでしょうか。あとは、いかに魅力的な商品を展開していけるか。セブンイレブン限定の「レアチーズタルト」やコンビニ限定商品の「ふんわりペコちゃん」は、既に人気商品として定着しつつあります。長年、日本の洋菓子業界を牽引してきた不二家だけに、今後のコンビニ向け商品にも期待したいところです。

文:M&A Online編集部