今日、6月2日は「ドーナツの日」だと知っていましたか? アメリカでは毎年6月の第一金曜日を「ナショナル・ドーナツ・デー」としています。その始まりは、1938年。第一次世界大戦中に救世軍の女性たちが前線で戦う兵士らにドーナツを届けたことを称え、救世軍が大恐慌時代の貧困者救済のための募金イベントを行ったことに由来します。当日はアメリカの多くのドーナツ店でドーナツが無料で配られるのだとか。
日本にドーナツが本格進出したのは、1971年のこと。その年の4月にミスタードーナツ、9月にダンキンドーナツの1号店がそれぞれオープンし、ドーナツは私たちの生活に馴染んでいきました。
ミスドことミスタードーナツは、日本ではダスキンが展開していますが、もともとは米ボストンで生まれたドーナツチェーン。実は、ダンキンドーナツ創業者の義妹の夫がミスタードーナツを始めました。一緒にダンキンドーナツを運営していたものの、経営方針に違いがあったため独立したといいます。
そんな本家アメリカのミスドは、1990年に当時ダンキンドーナツを所有していた米大手食品会社のアライド・リヨンズに買収され、ダンキンドーナツに吸収合併されてしまいます。この合併によって、北米のミスドのほとんどはダンキンドーナツに切り替えられ、今ではミスドの店名を掲げたお店はイリノイ州にたった1店舗あるのみ。
一方、日本ではダスキンが米ミスタードーナツと提携してミスド1号店を出店したのち、1983年にアジア圏におけるミスタードーナツの商標権並びに販売権を獲得。着実にフランチャイズビジネスとして店舗数を拡大させていきました。1998年にはダンキンドーナツが撤退し、ミスドがドーナツ市場の90%を独占するという一人勝ち状態が続いています。
ダスキンは清掃事業のほか、ミスドを主軸とした外食事業も早くから展開。1990年には米H.N.フェルナンデス社と提携してカフェデュモンドを、1991年には日本水産と共同でザ・どん(2011年にダスキンの完全子会社、2016年からフジオフードシステム傘下)を手がけ、今ではオーストラリア発のパイ専門店「パイフェイス」やシフォンケーキ専門店「ザ・シフォン&スプーン」など、ミスドを含め8つの業態を展開しています。
中でもユニークなのがモスド。2008年にモスフードサービスと資本・業務提携を結んだことをきっかけに、モスバーガーとミスドの両方のメニューが楽しめる店舗が誕生しました。現在の店舗は関西国際空港店とイオンモール広島府中店のみですが、モスバーガーを食べて、ミスドのドーナツをデザートにするなんてこともできちゃいます。過去には、見た目がミニチュアバーガーの「ドーナツバーガー」(2009年)やバンズにフレンチクルーラーを使ったハンバーガー「モスのフレンチクルーラー」(2014年)といったコラボ商品も登場しました。
ドーナツ市場のシェアをほぼ独占しているとはいえ、ミスドがメインであるダスキンのフードグループ事業はあまり良好とはいえないようです。2017年3月期の売上は前期から8.8%減の401億5100万円、営業利益は4期連続で赤字となっています。2015年にコンビニ各社がドーナツ市場に参入してきた影響もあるでしょう。2016年には、一時は行列ができるほど人気だったクリスピー・クリーム・ドーナツの相次ぐ閉店も話題となりました。スイーツ市場が多様化し、健康ブームが押し寄せる中で、高カロリーなイメージがあるドーナツの存在感が揺らいできているのも一つの要因だといえます。けれども、ミスドもただ手をこまねいているわけではありません。今年2月には“からだにうれしいこと”を考えるというコンセプトのもと新たに「からだに にじゅうまる」という商品シリーズを展開し、オイルを40%カットした「オイルカットドーナツ」や「豆乳ホイップドーナツ」といった健康志向を意識したドーナツを発売。2020年までには、ドーナツを手作りしている様子が見えるオープンキッチンスタイルに既存の1000店舗を改装していく計画もあります。果たしてこの数年でドーナツ市場を盛り上げていくことができるのか。ミスドの今後の動きに注目です。
文:M&A Online編集部