「電子お薬手帳」NTTドコモが目指す業界標準

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ソニーのリリースより

電子お薬手帳を巡る動きが活発化してきた。

NTTドコモ<9437>は同社が展開するお薬手帳データ管理サービス「電子お薬手帳Link」と、日本薬剤師会(東京都新宿区)の電子お薬手帳アプリ「日薬eお薬手帳」に対応したSTNet(香川県高松市)の電子お薬手帳情報管理システム「健康の庫」を統合し、2019年下期に3者共同で「日薬eお薬手帳」として新サービスを始める。

シミックホールディングス<2309>傘下のシミックヘルスケアはソニー<6758>が展開している電子お薬手帳事業ハルモを譲り受け、2019年6月からハルモの事業展開を加速する。ソニーは事業譲渡後もハルモのシステム開発やサービス運用に携わってきた社員を引き続きハルモ事業に参画させる。

業界を制するのはどこ

2019年3月時点で「健康の庫」を利用できる薬局などは約4000施設、「電子お薬手帳Link」などが利用できるのは約5500施設。両システムを合わせると約9500施設となり、NTTドコモによると日本最大級の電子お薬手帳のプラットフォームになるという。

一方のハルモは薬局850、医療機関80の合わせて930施設。

このほかにも355店舗を展開するアイセイ薬局(東京都千代田区)が提供する電子お薬手帳「おくすりPASS」や、ホッペ(横浜市西区)が提供する電子お薬手帳アプリ「ホッペ」などもある。

NTTドコモは事業統合により業界標準サービスを目指すとしており、覇権争いが本格化することなる。将来どこが業界を制するのだろうか。

スマホで薬の情報や履歴を閲覧

電子お薬手帳は服用している薬剤のデータを電子的に記録したもので、スマートホンで薬の情報や履歴などを閲覧できる。政府は2015年に患者自身が服薬情報をいつでも、どこでも入手できるようにするとの方針を示し、2017年には、かかりつけ薬剤師・薬局が服薬情報を一元的に把握するための手段として電子お薬手帳の普及を推進するとした。

こうした動きに伴い、NTTドコモは2012年にチェーン薬局向けに電子お薬手帳の提供を開始。2016年に一般の薬局向けに汎用性の高いシステムを投入した。

STNetは四国電力の情報システム部門から分離独立した企業。2015年に日本薬剤師会の「日薬eお薬手帳」の提供を始め、同年に「日薬eお薬手帳」と連動した患者向けのお薬手帳情報バックアップサービスと、薬局、医療機関向けのお薬手帳情報参照サービス「健康の庫」を投入した。2019年下期に予定している事業統合に向け、患者や薬局への新サービスの開発に取り組む。

ソニー、シミック協業は新たなヘルスケアビジネスの第一歩

一方のシミックホールディングスは1992年に日本で初めて医薬品開発支援事業を始めた。現在、開発、製造、営業・マーケティングまでの医薬品に関する総合的な支援業務を提供する。シミックヘルスケアはハルモでリアルタイムに管理できる調剤データを活用して、患者とコミュニケーションがとれるデジタルチャネルを強化し、服薬期間中の患者をフォローするなどの新サービスを立ち上げる。

シミックホールディングスの中村和男最高経営責任者(CEO)は「ソニーとの協業は今後のヘルスケアに関する社会課題解決のあり方に、一石を投じる先進的な取り組み」と高く評価し、今回の協業が両社にとって新たなヘルスケアビジネスの第一歩になるとの見通しを示した。

政府が後押しする電子お薬手帳はスマートホンを活用するため、若い世代にも容易に受け入れられそう。ソニーによると「近くに加盟薬局はないがアプリは使いたい」という声もあるという。今後、話題のスマートホン決済サービスなどと連動した電子お薬手帳など、新手のサービスの登場もありそうだ。

文:M&A Online編集部