【ダイヤモンドダイニング】独自のブランドマネジメントとM&Aで成長

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※画像はイメージです

独自のブランドマネジメントとM&Aで成長するダイヤモンドダイニング

 ビリヤード、ダーツ、カラオケ、シミュレーションゴルフ、複合カフェなどのアミューズメント事業やライセンス事業を手掛けるダイヤモンドダイニング<3073>。1996年3月に創業し、創業時の目標であった「100店舗100業態」を2010年に達成した。

いまは第2創業期と位置づけ、マルチコンセプト戦略とマルチブランド戦略を融合した独自のブランドマネジメント制を導入し、高付加価値・競争優位性をもった持続的な成長を目指す。果たして、M&Aでは、どのような取り組みを行っているのか。

【企業概要】マルチコンセプト×マルチブランドが強み

 ダイヤモンドダイニンググループは、2017年2月末現在、ダイヤモンドダイニングと連結子会社10社、非連結子会社2社及び持分法適用関連会社1社の計14社で構成している。同じ商品・サ―ビスのカテゴリーに複数のブランドを投入する「マルチブランド」による飲食事業を主力に、国内においてビリヤード、ダーツ、カラオケ、シミュレーションゴルフ、複合カフェなどのアミューズメント事業やライセンス事業を手掛ける。

 店舗は集客力の高い首都圏を中心に山手線沿線内など、地域を絞って集中的に出店する「ドミナント展開」を推進。2016年2月末現在、74業態265店舗(海外含む)を展開し、山手線沿線内には180店舗を出店している。

 「GIVE "FUN & IMPACT" TO THE WORLD.」を企業理念とし、食材・手作り・コンセプト・内装・エンターテインメント等に「熱狂」的にこだわったサービスを提供。そのサービスを通じ、全てのお客様の満足の先にある「ワクワク・ドキドキ」する感動や歓喜をもたらし、さらに「熱狂」へ促す店作りを追求している。

 設立当初は店舗コンセプトがそれぞれ異なるマルチコンセプト(個店主義)戦略により、店舗ごとにテーマ性を持った出店を行っていた。ところが、創業時の目標であった「100店舗100業態」を2010年に達成して以降は、第2創業期と位置づけ、これまでの成長を支えてきたマルチコンセプト戦略とチェーン展開の強みであるマルチブランド戦略を融合し、両戦略を活用した独自のブランドマネジメント制を導入した。そのことによって、高付加価値・競争優位性のある創造・構築・追求による持続的な成長を目指している。

【経営陣】現社長は創業者で大株主の松村厚久氏

 現代表取締役社長の松村厚久氏は創業者であり、2017年2月28日現在、個人での所有株式数割合は36.14%の大株主である。

 松村厚久氏は日本大学理工学部在籍中に、サイゼリアでアルバイトを経験したことをきっかけに、飲食業の面白さを体験、卒業後は日拓エンタープライズに入社。ディスコの企画・運営に携わり、1995年に独立。当初から飲食店に興味があったが、資金集めのために「A&Yビューティサプライ」を設立し、日焼けサロンを都内に展開。その後、2001年銀座に1号店である「VAMPIRE CAFE」をオープンし、飲食業に参入。翌年12月にダイヤモンドダイニングに社名を変更した。

【株主構成】創業社長が大株主。オーナー色の強い株主構成

 ダイヤモンドダイニングの株主構成は下表の通り。創業社長の松村厚久氏が筆頭株主で、2位の松村屋も松村厚久氏の資産管理会社である。そのほか、銀行・証券などの金融機関が並ぶ。

大株主名 保有株式数(千株) 保有株式割合(%) 保有時価(百万円)
松村厚久 2,812 36.14 6,762.0
(株)松村屋 744 9.56 1,788.7
アサヒビール(株) 345 4.43 828.9
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 228 2.93 548.2
自己株 169 2.18 407.9
J.P.MORGAN SECURITIES LLC-CLEARING 72 0.93 174.0
資産管理サービス信託銀行(証券投資信託口) 66 0.85 159.0
日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) 63 0.80 149.7
大和証券(株) 58 0.74 138.5
日本生命保険相互会社 57 0.73 136.6

2017年2月時点。同社有価証券報告書を基にM&A Online編集部作成

【M&A戦略】「100店舗100業態」達成とともに、M&Aを急加速

 ダイヤモンドダイニングの沿革と主なM&Aは下表の通りで、業態など多彩な業態でM&Aを進めている。

商号をダイヤモンドダイニングに変更した後は、「迷宮の国のアリス」「ベルサイユの豚」など、独自のコンセプト業態を出店することで注目を浴びて業績を伸ばし、2007年には大阪証券取引所ヘラクレス市場(現東京証券取引所 JASDAQ市場)に上場した。

ダイヤモンドダイニングの沿革と主なM&A

年月 内容
1995年6月 「日焼けサロンマーメイド 池袋店」(東京都豊島区東池袋)を開店
1996年3月 東京都豊島区東池袋に、「有限会社エイアンドワイビューティサプライ」を設立
2001年6月 初の飲食店である「VAMPIRE CAFE」(東京都中央区銀座)を開店し、飲食店経営を開始
2002年12月 有限会社から株式会社に組織変更。同時に商号を「株式会社ダイヤモンドダイニング」に変更。本店を東京都台東区東上野に移転
2005年3月 本店を東京都中央区銀座に移転
2005年12月 「日焼けサロンマーメイド 池袋店」を閉店し、日焼けサロン事業から撤退
2006年9月 本店を東京都港区東新橋に移転
2007年3月 株式会社大阪証券取引所ニッポン・ニュー・マーケット―「ヘラクレス」に株式を上場
2008年6月 株式会社サンプールの株式を100%取得し、連結子会社化
2008年12月 株式会社シークレットテーブルを設立(100%出資子会社)し、株式会社シークレットテーブルと株式会社フードスコープとの間で事業譲渡契約を締結
2009年5月 株式会社ゴールデンマジックを設立(100%出資子会社)し、連結子会社化
2009年7月 株式会社シークレットテーブルが株式会社フードスコープから事業譲受、計33店舗を取得。株式会社ゴールデンマジックが「九州 熱中屋」ブランド1店舗目(東京都港区港南)を開店
2010年6月 共同出資(持分50%)による合弁会社として株式会社土佐社中を設立し、子会社化(注)1.
2010年9月 株式会社吉田卯三郎商店の株式を100%取得し、同社を完全子会社化
2010年10月 マルチコンセプト(個店)戦略により100店舗100ブランドを達成。上場株券市場区分を新JASDAQスタンダードへ移行
2011年6月 株式会社バグースの株式を100%取得し、同社を連結子会社化、アミューズメント事業を開始。本店を東京都港区西新橋に移転
2011年10月 米国にDiamond Dining International Corporationを設立(100%出資子会社)し、同社を連結子会社化
2011年11月 Diamond Dining International CorporationがDream Dining Honolulu LLC.(現 Shokudo Japanese LLC.、米国ハワイ州ホノルルにて日本食レストラン「SHOKUDO(食堂)」を運営)を連結子会社化
2013年3月 当社が株式会社シークレットテーブルを吸収合併。株式会社バグースの飲食事業部門を会社分割し、当社に承継
2013年3月 マルチブランド(複数)戦略を加速させるため、ブランド集約及び統一を実施。当社は既存店舗の一部を「九州 黒太鼓」「鳥福」「腹黒屋」「GLASS DANCE」「ベルサイユの豚」「薩摩ごかもん」、株式会社ゴールデンマジックが既存5店舗を「九州 熱中屋」へリニューアルオープン
2013年6月 Diamond Dining International CorporationがBuho Waikiki LLC.を設立し、同社を連結子会社化
2013年11月 本店を東京都港区芝に移転
2014年4月 KOMARS F&B PTE.LTD.(シンガポール:現Diamond Dining Singapore Pte.Ltd.)の株式を100%取得し、同社を連結子会社化
2014年10月 株式会社ゴールデンマジックが萩原商事株式会社・有限会社サンクスから事業譲受、計8店舗を取得
2014年11月 株式会社東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)から同取引所市場第二部へ市場変更
2014年12月 Diamond Dining International CorporationがDiamond Wedding LLC.を設立、KNG Corporationから事業譲受し、同社を連結子会社化
2015年3月 株式会社ゴールデンマジックが関西養老乃瀧株式会社より計13店舗を取得
2015年6月 株式会社 The Sailingの株式を51%取得し、同社を連結子会社化(注)2.
2015年7月 株式会社東京証券取引所市場第二部から同取引所市場第一部へ市場変更。Diamond Dining Singapore Pte.Ltd.がDiamond Dining Macau Limitedの株式を60%取得し、同社を連結子会社化
2016年9月 当社が株式会社ゼットン(証券コード3057)の株式を42%取得し、同社を持分法適用関連会社化
2017年3月 持株会社体制へ移行のため株式会社ダイヤモンドダイニング分割準備会社を設立
2017年4月 株式会社商業藝術の株式を100%取得し、同社を連結子会社化

 M&A Online編集部作成

 JASDAQ上場後、積極的にM&Aを取り組みはじめた。2008年6月にサンプールの買収を皮切りに、2009年7月にはフードコープから事業を譲り受け、2010年10月には創業時から目標としていた「100店舗100業態」を達成した。

 2011年6月にはバグースを買収してアミューズメント事業へ参入する。同年10月に米国子会社となるDiamond Dining International Corporationを設立し、同年11月には米国ハワイ州の日本食レストランを買収して海外進出を果たしている。

 その後、マルチコンセプト戦略とマルチブランド戦略を融合した独自のブランドマネジメント制を導入し、2013年3月から同年5月にかけてブランドの集約及び統一を実施している。

 2015年2月期には、高収益ブランドによる出店を拡大し、海外事業や新規事業への展開を積極的に取り組み始めた。2014年4月にシンガポールのらーめんダイニングなどを展開する企業を買収(だが、シンガポールの飲食事業については軌道に乗らず、2016年1月に事業撤退の方向性を決定した)。2014年10月には子会社を通じて萩原商事・サンクスから事業譲受を実施し、2014年11月に東証2部へ市場変更をした。

 2014年12月には米国子会社となるDiamond Wedding LLC.を設立し、米国ハワイ州でウエディング事業を展開している企業から事業譲受をして、ウエディング事業への本格参入に向けて一歩を踏み出した。

 2015年3月に子会社を通じて関西養老乃瀧から事業譲受を行い、2015年6月にはThe Sailingを買収、2015年7月に東証1部へ市場変更をした。そして、2016年2月期には新たに「1,000店舗 売上高1,000億円」の目標を掲げる。

 直近では、2016年9月にゼットン<3057>の株式を42%取得し、同社を持分法適用関連会社化し、2017年6月には商業藝術を買収するなど積極的にM&Aを実施している。

 ゼットンは、ビアガーデン事業・ダイニングカフェ事業・ブライダル事業など展開しており、ゼットンの連結化は、出店拡大やウエディング事業においてのノウハウ吸収などのメリットが挙げられる。

 商業藝術は、カフェ業態や和食業態の飲食事業・ウエディング事業など、広島、関東、中部、関西、福岡など広域に展開している。商業藝術の買収は、広島を中心とした中国地方においての新たなエリア拡大やノンアルコール業態の展開などのメリットが挙げられる。

 今後も、新たな目標の実現に向けた積極的な事業拡大を視野に入れれば、M&Aは必要不可欠といえる。

【財務分析】出店拡大で業績を伸ばすも、財務基盤の強化が課題に

 図1は、売上高、営業利益率及び当期利益率の推移である。

利益面では、2010年2月期に過去最高の営業利益を達成し、その後は収益の伸び悩みや費用増などにより減少、2015年2月期は高収益ブランドの出店拡大などにより改善するが、2016年2月期にはシンガポールの事業撤退など一過性の要因による海外事業の損失幅拡大から当期純損失に転落。しかし、海外事業を除けば、国内は過去最高の売上高、営業利益を達成している。

2017年2月期の業績では、新規開店費用の抑制や海外事業の収益改善により売上高を前期比2.3%増の30,509百万円、営業利益を前期比72.2%増の1,641百万円と増収と大幅な増益を達成した。

 過去の業績をみると、出店拡大の成長戦略により業績を伸ばしており、M&Aによる規模拡大が出店ペースを加速させてきた格好である。

図1 売上高・営業利益率・当期利益率推移

 図2は、自己資本比率及び有利子負債残高の推移である。 財務面は、自己資本比率が2012年2月期以降、20%台で推移している。有利子負債残高も増加して高い水準にあり、財務基盤の強化は課題として挙げられる。

図2 自己資本比率及び有利子負債残高

 図3は、セグメント別売上推移である。ダイヤモンドダイニングのセグメントは、飲食事業、アミューズメント事業、ライセンス事業に分類される。

セグメント 取引商品・製品
飲食 飲食店の経営及び運営
アミューズメント 国内において、ビリヤード、ダーツ、シミュレーションゴルフ、複合カフェ等の遊技場の経営及び運営
ライセンス これまで自社グループで開発し直営展開しておりました業態の一部をライセンス化し、主に飲食事業を行っている外部の法人企業様へ販売

図3 セグメント別売上高推移

 2017年2月期では、飲食事業の売上高が前期比0.07%減の22,449百万円、セグメント利益が36.1%増の2,210百万円。アミューズメント事業の売上高が前期比9.7%増の8,029百万円、セグメント利益が前期比1.2%減の1,118百万円。ライセンス事業の売上高が前期比15.%減の30百万円、セグメント利益が16.5%減の14百万円となっている。

今後、相対的に低迷しているライセンス事業において、どのような対応をとるのかも課題の一つである。

【まとめ】狙いが明確なM&Aを今後も積極的に推進

 ダイヤモンドダイニングは、積極的な新規出店をしながら、並行してM&Aも積極的に行い、業績を大幅に拡大し、持続的成長を果たしていることから、M&A戦略は成功しているといえる。

ダイヤモンドダイニングが行うM&Aは、狙いが明確であり、様々な業態の店舗展開、エリア拡大、ノウハウの吸収などを図り業績を拡大し、企業価値を向上させている。

図4は、ダイヤモンドダイニングの中期経営計画で掲げている方針達成の成長戦略として注力しているポイントであるが、今後もこうした成長戦略の達成のための、戦略的なM&Aの取り組みに期待していきたい。

図4 中期経営計画 成長戦略達成のための施策

同社「新3カ年中期連結経営計画」より

※この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

文:M&A Online編集部