大赤字が続く出前館は配達員の報酬を引き下げるのか?

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出前館<2484>の2022年8月期第2四半期の営業損失が224億2,200万円となりました。前年の同期間は85億4,300万円の営業赤字。138億7,900万円も損失額が膨らんでいます。

2022年8月期第2四半期の売上高227億3,700万円に対し、売上原価は261億2,700万円。売上総利益が出ておらず、配達員への報酬で稼いだ分のほとんどを吸い取られています。出前館は国内のデリバリーシェアのおよそ半分を握るまでに成長しており、利益を出す次のフェーズが見えてきました。

この記事では以下の情報が得られます。

・出前館の業績推移
・大赤字を出している理由
・国内のフードデリバリー業界の動向

原価の75%を外注費が占める

出前館の売上高は極めて堅調に推移しています。2022年8月期第2四半期の売上高は前年同期間と比べて2倍以上の227億3,700万円となりました。2021年8月期第2四半期の売上高は104億900万円。このときも前年同期間比で2.7倍も伸張しています。

■出前館半期ごとの売上高と営業利益の推移(単位:百万円)

2018年8月期
第2四半期
2019年8月期
第2四半期
2020年8月期
第2四半期
2021年8月期
第2四半期
2022年8月期
第2四半期
売上高 2,568 3,119 3,828 10,409 22,737
前期比 101.7% 121.5% 122.7% 271.9% 218.4%
営業利益 341 -40 -989 -8,543 -22,422

決算短信より筆者作成

しかし、2018年8月期第2四半期に3億4,100万円の営業利益を出してから、半期で一度も利益を出していません。赤字幅は拡大し続けています。

出前館の売上高は大きく2つの要素で構成されています。出前館サービス手数料と配達代行手数料です。出前館と契約した飲食店は、アプリに掲載される手数料として注文額の10%、配達代行は25%という設定になっています。

※出前館「『出前館』、新料率プランを2021年1月1日(金)より提供開始!」より

出前館の売上高を勢いよく押し上げているのが配達代行手数料。2021年8月期第2四半期は46億9,100万円でしたが、2022年8月期第2四半期は139億5,800万円となりました。およそ3倍に膨らんでいます。

一方、出前館サービス手数料は46億8,800万円から74億8,600万円で1.6倍の伸びに留まっています。出前館は広告の掲載や受発注システムによる手数料ではなく、利益が出にくい配達代行手数料で稼いでいるため、大赤字となっているのです。

出前館はもともと自社で抱えたスタッフを使って配達を行っていましたが、新型コロナウイルス感染拡大でデリバリーマーケットが拡大すると、配達員を外注する方向へとシフトしました。

2020年8月期の外注費は原価全体の8.6%でしたが、2021年8月期は75.7%まで急増しています。

※有価証券報告書より筆者作成

Zホールディングスのバックアップでシェアを拡大

出前館の配達員の報酬は1件当たり550円~715円に設定されています。Uber Eatsの報酬体系は複雑ですが、2021年3月に報酬を引き下げ、発注者からチップをもらう仕組みを構築するなど、会社の負担を減らす方向へと進んでいます。

出前館が店舗から受け取る配達代行手数料を30%から25%引き下げ、配達員への報酬を高く設定しているのは、コロナ禍を機にシェア獲得を狙っているためです。

※決算説明資料より

出前館の国内フードデリバリーのシェアは2021年9月の26%から48%まで拡大しています。シェア拡大にこだわる理由は市場そのものが伸びているためです。

■フードデリバリー市場規模

ICT総研「2021年 フードデリバリーサービス利用動向調査」より

しかし、デリバリーサービスは利益が出にくいため、撤退が相次いでいます。2022年1月にフードパンダが日本でのサービスを終了。5月を目途にDiDi Foodが撤退を決めました。

出前館が採算度外視で事業を推進しているのは、大型の資金調達によって自己資本に厚みがあるためです。2022年8月期第2四半期は228億8,600万円の純損失を計上していますが、自己資本比率は82.7%もあります。

出前館は2020年3月にLINE(東京都新宿区)を引受先とした第三者割当増資を実施。300億円を調達しました。2021年9月にはZホールディングス<4689>や海外向け公募増資で800億円を調達しました。潤沢な資金力に依存しているのです。

自己資本比率が30%程度まで落ちた後、出前館がとると予想される行動は3つに限られてきます。1つ目は飲食店の配達代行手数料の引き上げ。2つ目は配達員への報酬の引き下げ。3つ目は追加の資金調達です。

この中で最も難易度の高いのが配達員への報酬の引き下げです。配達員はこのビジネスの核になっており、大量の配達員の離反は運用の支障となるためです。そうかといって、飲食店にとってデリバリーは実入りのいい商売とはいえず、30%以上の手数料を徴収するのは不可能でしょう。

出前館はどの時点で黒字化を目指すのか。その転換点が配達員の報酬引き下げのタイミングになると予想されます。

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