【サイバーエージェント】盤石なベンチャー企業の挑戦と変貌とは?

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画像はイメージです。

ブログサービスAmebaを主力事業とし
売上高2000億円、東証1部上場へ成長
 サイバーエージェント<4751>は1998年にインターネット広告事業を展開する企業として設立された。インターネットバブルの波に乗り2000年3月に東証マザーズに上場するも、直後にバブルが崩壊した結果、業績が悪化、00年9月期は大幅に赤字を計上している。04年9月期に初めて営業利益の通期黒字化を達成する。04年にブログサービス「Ameba」を主力事業とし、現在ではこのほかにインターネット広告事業、スマートフォンゲーム事業、メディアその他事業、投資育成事業、新規事業などを展開するまでとなり、売上高は2,000億円超に成長。14年には東証1部に市場変更した。

■サイバーエージェントの行った主なM&A

年月 内容
2004.2 インターネットビジネスでの業容拡大のため、インターネット上での結婚総合情報サービスを提供するイー・ベント(売上高5400万円)の株式100%を買収
2004.8 インターネットビジネスでの業容拡大のため、プライベートブランド商品を主軸としたオンラインショッピングを提供するディーバ(売上高2億7400万円)の株式100%を9000万円にて買収
2004.8 インターネットビジネスでの業容拡大のため、中国茶を専門とするオンラインショッピングを提供するトランスワークス(売上高6400万円)の株式100%を1億1000万円にて買収
2005.8 金融事業の足掛かりとして、ジェット証券の株式18.11%を第三者割当増資引受により8億3000万円にて取得
2005.12 電通グループとのモバイルマーケティング分野における業務・資本提携のため、シーエー・モバイルの株式5.6%を電通ドットコムに、5.6%をサイバー・コミュニケーションズに譲渡
2006.3 モバイル広告市場拡大を目的としてNTTドコモとの業務・資本提携のため、シーエー・モバイルの株式10%を18億円にてNTTドコモに譲渡
2006.12 モバイルメディア事業強化のため、連結子会社がニュース・サービス・センターの株式71.5%を1億3500万円で買収し、出資比率が77.2%に
2009.9 連結子会社であるジークレスト(売上22億2600万円)の株式40.72%を14億2400万円にて追加取得し、完全子会社化
2012.5 連結子会社であるVOYAGE GROUP(売上79億2800万円)のMBOによる独立のため、株式62%をポラリス・キャピタル・グループに譲渡し、出資比率が10.7%に
2012.12 連携強化を目的としてディー・エヌ・エーとの業務・資本提携のため、Cygamesの株式22.11%をディー・エヌ・エーに譲渡し、出資比率が74.04%に
2013.1 事業の選択と集中という観点から、連結子会社であるサイバーエージェントFX(売上84億9800万円)の株式100%をヤフーに210億円にて譲渡
2014.11 エンターテインメント事業強化のため、エイベックス・グループ・ホールディングス株式の4.4%を31億5400万円にて買収

M&Aに積極的ではないものの
大手企業との資本提携により事業拡大
 
インターネット関連事業を展開する企業は、旧・ライブドアを筆頭に総じてM&Aで事業を拡大してきた印象があるが、サイバーエージェントはM&Aに対して積極的ではないことが上記の年表からうかがえる。04年に3社を買収し経営権を取得しているが、それ以降は経営権を取得するM&Aは行われていない。これは、同社創業者で代表取締役社長の藤田晋氏が、創業当初より「自らで事業を立ち上げ、自力で成長する」方針で事業拡大してきたことが影響している。

 一方で、事業の強化を目的とした資本業務提携は積極的に行っている。NTTドコモやディー・エヌ・エーといったプラットフォームを提供する企業との提携や、電通グループ、エイベックス・グループ・ホールディングスと、それぞれの業界の最大手との提携を行うことで自社の事業強化を図っている。サイバーエージェントは、今後もM&Aではなく大手企業との資本提携により事業を拡大する方針を取り続けることが見込まれる。

■サイバーエージェントの財務分析

 上記のグラフでまず目を引くのが、自己資本比率の増減である。00年3月にマザーズに上場した際、有償一般募集により自己資本比率が大幅に上昇、01年9月期には自己資本比率は最大93%まで増加しているが、総資産の増加に伴い自己資本比率は低下し、12年9月期には30%となっている。しかし、13年9月期に総資産が大幅に減少し、その影響で自己資本比率が56%と大幅に上昇している。これは、13年1月にサイバーエージェントFXの株式を譲渡したことで、12年9月期まで計上されていた外国為替取引顧客預託金(資産)および外国為替取引顧客預り証拠金(負債)が計上されなくなったことが要因である。

 なお、12年9月期の外国為替取引顧客預託金は516億円、外国為替取引顧客預り証拠金は634億円が計上されているが、13年9月期はそれぞれ0となっている。

■業績推移

 次に業績推移を見てみると、売上高は順調に増加しているが、経常利益は13年に大きく減少していることが分かる。これは、13年9月期は「大規模な先行投資の年」として位置付け、広告宣伝費が大幅に増加(12年9月期:61億9600万円→2013年9月期:114億7900万円)していることが要因である。12年9月期にスマートフォン向けAmebaの提供を開始し、13年9月期にAmebaの大規模プロモーションを行っている。大規模プロモーションにより、14年9月期の売上高は大幅に増加している。

■セグメント別業績(Ameba事業)

 また、13年1月に連結子会社であるサイバーエージェントFXの株式をヤフーに譲渡したことも13年に経常利益が減少した要因である。同社は売上高および利益が安定していたがAmeba事業などに注力するため、いわゆる「事業の選択と集中」という観点から、外部に譲渡したことで毎期30億円以上計上していた利益が計上されなくなった。

■セグメント別業績(FX関連)
ただし、13年9月期の経常利益は前期に比べ減少しているが、純利益は増加している。これは上記のサイバーエージェントFX株式売却により、多額の売却益が生じたことが要因である。純利益が増加していること、および13年2月に50億円の自己株式取得(うち、43億円を消却)したことも相まって、13年9月期は前期とほぼ変わらぬ配当金を株主に支払っている。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部