FTXジャパン買収、コインベース撤退で国内仮想通貨が大再編へ

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破綻したFTXの日本法人に熱い視線が…(Photo By Reuters)

2022年11月に経営破綻した米暗号資産(仮想通貨)交換業大手FTXの日本法人「FTXジャパン」買収が、本格的に動き出す。世界的な金融引き締めに伴う「カネ余り」解消で逆風が吹く暗号資産業界だけに引き取り手がないと思いきや、ブルームバーグによると41社が入札に興味を示し、うち25社が機密保持契約を結んで「臨戦態勢」に入ったという。なぜ「冬の時代」を迎えた暗号資産取引所に「買い手」が殺到するのか?

市場は縮小へ、国内31社は多すぎる!

「一般論として興味がある」とFTX日本法人買収に前向きなのは、マネックスグループ<8698>の松本大社長兼CEO(最高経営責任者)。同社は子会社に暗号資産交換業者のコインチェック(東京都渋谷区)を抱える。同子会社は2018年に暗号資産流出事件を起こし、マネックスグループに買収された。

松本CEOは実際に動くのかどうかは明言しなかったが、FTX日本法人の買収により「競争相手が減ることはいいことだ」と話している。実はこれこそがFTX日本法人に買い手が殺到する理由なのだ。同法人の売却は2月1日に予備入札が締め切られ、3月21日に競売を実施する。

金融庁によれば、2022年12月31日現在で国内では31社の暗号資産交換業者が登録している。金利上昇に伴う流入資金の先細りで暗号資産相場は下落する可能性が高い。代表的な銘柄であるビットコイン(BTC)は米国の金融引き締めを受けて2022年5月から下降局面に入っている。

日本でも金利が上昇し始めており、暗号資産の値上がりは期待しにくい状況になってきた。米暗号資産交換業大手のコインベースが18日に経営環境の悪化から日本での事業を終了すると発表するなど、事業撤退も増えそうだ。

「黒船」バイナンスへの対抗上も国内業界再編は必須

さらに2022年11月には世界最大手のバイナンス・ホールディングス(ケイマン諸島)が、サクラエクスチェンジビットコイン(東京都港区)を、韓国カカオ傘下のカカオピッコマから買収。日本の暗号資産市場への進出に乗り出し、競争激化が予想される。

ただ、バイナンスは2018年と2021年の2度にわたって、インターネットを介して無登録で日本居住者向けにサービスを提供したとして金融庁から警告を受けており、国内で事業を拡大するには時間がかかりそうだ。

マネックスグループをはじめとする国内事業者としては、今のうちに業界再編を実施してバイナンスの本格展開に備えたいところだ。

バイナンスは600種類を超える仮想通貨を取り扱っているほか、取引手数料が一律0.1%と低い。ただ、日本円での入金に500円から1500円の手数料がかかるのがネック。国内で本格展開して為替手数料がなくなれば、大きなシェアを獲得する可能性が高い。

仮想通貨の「黒船」バイナンスに対抗するためにも、FTX日本法人をはじめとするM&Aで規模拡大の市場再編は避けられないのだ。

文:M&A Online編集部

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