元メガバンク行員が語る、銀行で有利にM&Aを進める方法とは?②

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写真はイメージです。

銀行にM&Aの相談を検討している経営者は多いはずだ。銀行に協力してもらうことによって、M&Aをスムーズに進めてもらえるケースもあるだろう。そこで今回は、積極的に銀行にM&Aの協力をしてもらうための方法について紹介をする。

前回説明した方法以外の方法について紹介するのでぜひ参考にしてほしい。

個人取引を拡大するのが一番!

自社のM&Aを積極的に協力してもらうための方法はいくつかあるが、最も効果的なのは、法人取引だけではなく個人取引も積極的に協力することだろう。

多くの銀行は最近、個人取引であるリテール取引を縮小傾向にある。支店の数を減らしている銀行も多く、今後もこの傾向は続くはずだ。

しかし、中小企業のオーナーなど富裕層についての取引は拡大傾向にあり、今後もかなり力を入れていく銀行が多い。もし、中小企業の法人の取引だけではなく個人の取引を獲得できれば、銀行にとって非常にありがたいことになるのだ。

個人の取引と一口にいっても様々な取引があるが、最も喜ばれるのは、資産運用と相続関連の取引になるだろう。

銀行の資産運用業務とは

多くの方は、銀行の主要業務といえば、決済業務や為替業務を思い浮かべるかもしれない。もちろん、決済業務や為替業務は銀行の主要業務ではあるが、現在多くの銀行で力を入れているのは資産運用業務になる。

投資信託や外貨預金、債券などの投資商品を購入すれば、ほとんどの銀行はとても喜ぶはずだ。

もちろん、資産運用についてはリスクがつきものであるが、現在の銀行預金の金利を考えた時、資産運用を行う必要性は非常に高い。

投資商品の組み合わせであるポートフォリオをしっかり構築できれば、資産運用は決して怖いものではない。

銀行の言いなりになるのは危険ではあるが、ご自身の将来を考えて、資産運用に乗り出すのは決して悪いことではないはずだ。

銀行の相続業務とは

銀行は、資産運用業務だけではなく相続業務にも非常に力を入れている。相続業務とは、遺言の執行を家族に代わって銀行が行う遺言信託や、相続が実際に発生したときに、相続手続きを銀行が代理に行う遺産整理業務などが当てはまる。

銀行にとって相続業務は、個人だけではなく家族やその次の世代まで取引を拡充させることができる可能性があるので非常に重要視されている業務になるのだ。

また、近年、相続によって家族関係がおかしくなってしまうケースは非常に多い。特に、様々な資産を保有している中小企業のオーナーにとって相続は悩みの種になっているのではないだろうか。

銀行に相続業務を頼むと一定の手数料はかかるが、安心して任せられるメリットはある。手数料についても取引が深ければディスカウントしてもらえる可能性もあるので、決して経営者にとって悪い話ではないだろう。

相続業務に積極的に協力することによって、銀行との関係を深められるのはメリットといえるのではないだろうか。

まとめ

今回は、銀行にM&Aの力を入れてもらうための方法について紹介をした。

M&Aについては多くの銀行で力を入れている分野になるが、規模によっては、力を入れてもらえない可能性もある。

しかし、規模が小さいM&Aの場合でも、前回と今回紹介したような方法で、銀行に協力することによって、力を入れてもらえる可能性は十分あるのだ。

もちろん、自社にとってデメリットになる過剰な協力をする必要は全くないが、銀行が提供するサービスの中には、自社にとって決して悪くないものも多いはずである。自社にとってメリットがあり、銀行に協力できることがあれば積極的に協力してみてはいかがだろうか。 

文:渡辺 智(メガバンクに11年勤務。法人営業・個人営業に従事)