元メガバンク行員が語る、銀行にM&Aの相談をするデメリットとは①

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銀行にM&Aの相談をしようと考えている経営者の方は多いのではないだろうか。特に、融資を受けている銀行の場合、自社の経営状況についてしっかり把握してくれているため、何かと相談しやすいだろう。

確かに、銀行にM&Aの相談するメリットはたくさんあるが、銀行に相談するデメリットも実はたくさんあることを皆さんはご存知だろうか?

そこで今回から2回分けて、銀行にM&Aの相談をするデメリットについて紹介する。

銀行にM&Aの相談をするデメリットは主に6つ!

銀行にM&Aの相談をするデメリットがたくさんあるが、主なデメリットは6つだ。

・M&Aの相手は銀行の取引先から選ばれる
・個人取引について圧力をかけられる可能性がある
・M&Aの経験が少ない法人営業部が担当する可能性がある
・担当者の力に左右される
・紹介会社の手数料が高い場合がある
・利益相反の問題がある

今回は、「M&Aの相手は銀行の取引先から選ばれる」「個人取引について圧力をかけられる可能性がある」「M&Aの経験が少ない法人営業部が担当する可能性がある」について説明する。

M&Aの相手は銀行の取引先から選ばれる

M&Aの相手は、基本的に銀行の取引先から選ばれることになる。メガバンクなど全国に支店がある場合は、様々な選択肢があるため、大きなメリットになるが、地方銀行の場合、取引先が少ない銀行も少なからずあるため、逆にデメリットになる可能性があるだろう。また、一度紹介されると、なかなか取引銀行の手前、断れない雰囲気にもなりがちだ。

選択肢が多く、自社に合った相手先を見つけることができれば良いが、逆に選択肢が狭まる可能性があるのは、銀行にM&Aの相談をする大きなデメリットだろう。

個人取引について圧力をかけられる可能性がある

M&Aの相談を銀行にする場合、経営者個人の取引について圧力をかけられる可能性がある。銀行は融資をする立場なので、一企業に比べ、有利な立場にあるのは周知の事実だろう。

法律で禁止されているが、この有利な立場を利用して、融資に影響を与えることをにおわして、経営者個人の資産運用などの取引を強制する可能性があるのだ。

多くの銀行では、法人部門と個人部門は分かれている。別れてはいるが、お互いに協力して成果をあげると、大きく評価される銀行は非常に多い。法人オーナーなどに資産運用を行ってもらうと、担当している法人営業部や個人部門は大きく評価されるのだ。

このような評価制度があるため、M&Aの相談をすると、経営者個人の取引を強制されるケースが非常に多い。もちろん、資産運用などを行いたければ、問題は無いだろうが、全く興味がないのに、強制されてしまう可能性があるのは、銀行にM&Aの相談をする大きなデメリットだろう。

M&Aの経験が少ない法人営業部が担当する可能性がある

銀行は、金融のプロであると思っている方も多いかもしれないが、M&Aなどの特殊案件については、過去に担当したことがない法人営業部もたくさん存在するのが現実だ。

経験豊富な法人営業部であれば、スムーズにM&Aの実務も行ってくれるが、経験が少ない法人営業部が担当してしまうと、様々なところで、支障をきたしてしまう可能性がある。

また、経験豊富な法人営業部の場合でも、規模が小さいM&Aの場合、周辺の規模が小さい法人営業部が担当する可能性もあるので注意が必要だ。

大口案件の場合は、M&Aの専門部隊である本店の部署が担当することになるが、規模が小さなM&Aの場合、あまり真剣に取り合ってくれない可能性もあるのは、銀行でM&Aの相談をする大きなデメリットになるだろう。

まとめ

今回は、銀行にM&Aの相談をするデメリットについて説明した。銀行にM&Aの相談をするメリットはたくさんあるが、当然、デメリットもある。次回の記事もお読みいただき、銀行にM&Aの相談をするデメリットについてしっかり理解していただければ幸いだ。

文:渡辺 智(メガバンクに11年勤務。法人営業・個人営業に従事)