GogleもFacebookも株主の考えていることは同じ

KKRやブラックストーンは、「世界最高峰の投資集団」である。「世界のTop of Top」といわれる教育機関の、そのまた上位1%しか門をくぐることができないようなウルトラエリートの集団だ。ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーで30代のうちにパートナーになるような人材ばかりである。

そのようなウルトラエリートが、持てる能力のすべてを投じてリターンの最大化に全力を傾けるのだ。並みの投資家の判断の及ぶところではない。それこそ、「ブラックストーンやKKRのリターンの一部にあやかれるなら、議決権なんて別に要らない。」というのがこうした会社の株主の本音だろう。

こう考えてみると、GoogleやFacebookの株主だって同様だろう。セルゲイ・ブリン氏、ラリー・ページ氏、エリック・シュミット氏、マーク・ザッカーバーグ氏とその仲間たちよりもテクノロジーとビジネスの将来について正しい洞察を持って、長期で株価を上昇に導ける株主などいるだろうか。

むしろ彼らの意思決定の精度とスピードが落ちないよう、長期的に安定した議決権を確保して短期の圧力から解放された状態の方が株主にとって安心なはずだ。

起業家精神が米国を支えるという「暗黙の国是」

これまで米国で普及が進むデュアルクラスについて考察してきた。筆者の所感としては、このような制度が許容される理由のひとつとして、やはり米国における「起業家精神」というものに対する位置づけや役割、社会の受け止め方が特別なものと感じざるを得ない。

本稿で取り上げた3つの投資ファンドの中で圧倒的頂点にあるKKRも、元をたどれば創始者のヘンリー・クラビス氏、ジョージ・ロバーツ氏らが30代前半で立ち上げたベンチャー企業だ。2人は独立に当たって当時勤めていたベアスターンズの上司にエンジェル投資を依頼した。「そんなの上手くいくわけない」と、あっさりと断られたそうだ。ブラックストーンも創業時の運用資産は、わずか5000万円程度だったという。

それでも自らの才覚と、中堅企業の事業承継問題や複合企業のリストラがもっと顕在化してくることを見越して、新事業に賭けたのだ。そこにはテクノロジーで世界を変えようとするシリコンバレーの起業家と根底では通じるものがある。

(この項つづく)

文:西澤 龍(イグナイトキャピタルパートナーズ 代表取締役)