前回の記事で、バイアウトファンドの最も重要なリターンの源泉となる「LBO」について触れたところで、本題に戻ろう。このように投資ファンドは「1株1議決権」を前提として、株主権を存分に行使してリターンの最大化を目指す。

ある意味、米国株主資本主義を究極まで純化した存在といえる。しかし、その投資ファンドが、自らの上場においては、先に述べたように一般株主の権利を著しく制限する特殊な議決権構造を採用しているのだ。

なぜ「ご都合主義」が成り立っているのか

これをどう捉えるべきか。ちょっとずるいんじゃないか。そう考える人も多いだろう。自らが信じる行動原則(1株1議決権の企業統治を原則とした投資リターンの最大化)に、自らもまた委ねるべきではないか、そう主張する機関投資家もいるはずだ。

このような批判を受けてか、カーライルはリミテッドパートナーシップの上場という形から、通常の株式会社(いわゆるC-Corporation)への転換を図るだけではなく、同時にデュアルクラス構造も廃止する方向で動いている。デュアルクラスは機関投資家に評価されにくいため、主要なパッシブインデックスに採用されにくいという事情もあるようだ。

しかし、一方でブラックストーンは公表情報で把握する限り、このような実質的デュアルクラス構造を変更する予定はないという。(以下記事参照)
ロイター> https://www.reuters.com/articl...
フィナンシャルタイムズ> https://www.ft.com/content/03f5675e-b37f-11e9-bec9-fdcab53d6959

このようなバイアウトファンドの「ご都合主義」にも見える統治構造に対して、「米国型株主資本主義の矛盾」とばかりに指を指すことは簡単だ。しかしここでは、別の視点を提示してみたい。

もし仮に、これらの投資ファンドが「1株1議決権」の普通の企業統治構造になったとしよう。その時に、例えばKKRやブラックストーンに対して、「モノ言う株主」として適切な進言・アドバイスをして、両社のリターンをより最大化できるような株主が果たして存在するだろうか。つまり、KKRやブラックストーンの経営陣やメンバーよりも高い投資能力のある株主はいるだろうか。多分、いない。