コロナワクチン接種予約トラブルの元凶は「初歩的ミス」だった!

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の決め手となるワクチン接種が日本でも始まり、政府は2021年7月末までに65歳以上の高齢者の接種を完了するよう自治体に求めている。接種が進むにつれ、受付や予約システムの混乱が報じられるようになった。その原因は「初歩的なミス」という。

「誤認識」や「架空番号での予約」など問題続出

自治体に個人単位のコロナワクチン接種状況を把握させるため、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が接種券のバーコードを読み取って管理するシステム「ワクチン接種記録システム(VRS)」を開発。全国の接種会場へ短期間のうちに配備しなくてはならないため、シャープ製と中国レノボ製のAndroidタブレット端末4万1000台を配布した。

ところが自治体から「読み取れない」「番号を誤認識する」との報告が殺到。政府はバーコードの読み取り精度を上げるため、タブレット端末を固定する専用スタンドを配布するなど、対応に追われた。

さらに防衛省が運営するワクチン大規模接種センターのネット予約システムが、でたらめな接種券番号でも予約できることが判明。岸信夫防衛相は「虚偽予約を防ぐシステムを短時間で構築するのは難しく、防衛省が個人情報を把握するのは適切ではない」と説明している。

実はこれらのトラブルの原因は、国民に配布された接種券の番号にあった。食品や日用雑貨など、日常で購入する商品に印刷されているバーコードには当然のように付与されている「チェックディジット」がついていなかったのである。

たった1桁付け加えるだけで防げたミス

チェックディジットとは、読み取ったバーコードが正規なものかどうかを自動判別する数字のこと。バーコードで表示する数字が18桁だった場合、前の17桁は任意の数字を割り振り、残りの1桁に例えば「17桁の数字を全て足して3で割った余り」などの計算式の答えを入れる。

この数字がチェックディジットだ。でたらめな数字を入力しても、計算が合わないためにほとんどの不正入力を防ぐことができる。

タブレットで接種券を「読み取れない」のは受け付けがまごつくだけだが、「番号を誤認識する」は接種ミスなどの重大なトラブルにつながりかねない。この「誤認識」も、チェックディジットがあれば防げる。

チェックディジットがあれば岸防衛相が難しいとしていた虚偽番号を弾くこともできたし、個人情報と照合する必要もない。接種券番号にもう1桁加えるという単純な対応で済んだのである。時間がかかる作業でもない。

バーコードにチェックディジットを付けるのはシステムの「基本中の基本」であり、全国民に付与する接種券番号に付けていないのは「初歩的なミス」といえる。なぜ、政府発注のシステムベンダーがチェックディジットのない番号を付与するシステム設計にしたのか、大きな疑問が残る。

文:M&A Online編集部