2期連続営業赤字のクックパッドが従業員40名削減のリストラ策を実施

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※画像はイメージ

レシピサイトを運営するクックパッド<2193>の2022年12月期の売上高が前期比9.2%減の90億8,600万円、35億2,000万円の営業損失(前年同期は26億3,200万円の営業損失)を計上しました。6期連続の減収、2期連続の営業赤字となりました。

クックパッドは広告事業の一部を廃止。食育活動の「おりょうりえほん」や釣り人向けの情報サービス「ツリバカメラ」など6つの事業を閉鎖します。

また、2月13日に上限40名の希望退職者の募集を行いました。クックパッドが大胆なリストラに乗り出しています。

この記事では以下の情報が得られます。

・クックパッドの業績
・リストラ策の内容

会員の減少が広告費の縮小を招く負のスパイラル

クックパッドは2016年12月期の売上高が168億4,500万円でした。ここが絶頂期となり、減収へと転じます。営業利益率は2016年12月期に29.8%、2017年12月期に40.2%ありましたが、やがて縮小して赤字に陥りました。

※決算短信より

クックパッドが減収し続けている要因は2つあります。1つは課金ユーザーが減少していること。もう1つはレシピサービスの広告売上高が縮小していることです。

クックパッドの2022年12月時点での課金ユーザー数は168万2,000人でした。前年と比較して15万人減少しています。1年間でおよそ1割が離反している計算です。

会員売上はクックパッド全体の売上高の7割を占めています。強力な収益基盤が弱体化しており、2022年12月期の会員売上は前年同期比7.6%のマイナスとなりました。

■会員売上の推移

※決算説明資料より

広告売上の縮小も顕著です。2022年12月期の広告売上は15億4,100万円。前年と比較して25.8%も縮小しています。ユーザー数の減退が鮮明になっているため、積極的に広告を出稿したいと考える企業が減っていると予想できます。

■広告売上の推移

※決算説明資料より

クックパッドの業績の悪化は、レシピ市況によるものではありません。むしろ、新型コロナウイルス感染拡大で外食機会が激減したことで、レシピ需要は盛り上がりを見せました。Googleトレンドでは、2021年5月に「レシピ」の検索数が2004年以来過去最高に達しています。クックパッドが上場以来初の営業赤字に陥った時期です。

消費者のレシピ需要が動画へと変化したことが一番の影響でしょう。レシピ動画サービス「クラシル」を提供するdely(東京都港区)は、2021年3月期に黒字化を達成しています。

■dely業績推移

海外展開に注力していたクックパッドは、ユーザーの嗜好の変化への対応に遅れをとりました。

抽象的な経営指標で投資家を煙にまいた?

クックパッドは2017年から10年間を投資期間と定め、新規事業の立ち上げやM&Aを積極的に行いました。

料理のトレーニングサービス「たべドリ」、食関連のECサイト「Komerco」、食育サービス「おりょうりえほん」、釣り人向けの情報サービス「ツリバカメラ」、スマートキッチンサービス「Oitoco」です。

「ツリバカメラ」はスタートアップのウミーベが展開していた事業で、クックパッドが株式を取得した後、吸収合併していました。

これらの事業は広告事業の一部とともに、すべて廃止されます。廃止する事業の2022年12月期の売上高は10億8,300万円で、全体の11.9%を占めていました。

廃止事業に従事していた従業員に対して、希望退職者を募ります。退職金が発生するため、臨時で発生する分の特別損失が発生すると考えられます。クックパッドは2023年12月期の業績予想を出していませんが、業績への影響は甚大だと考えられます。

経営責任を負うため、代表執行役 岩田林平氏と執行役 CFO 犬飼茂利男氏の役員報酬の減額を決定しています。「ようやくリストラ策を打ち出し、経営陣がその責任をとった」という感想を持つ株主がほとんどでしょう。

クックパッドの株価は2015年12月1日に2,808円の高値をつけてから下落を続け、2023年2月10日は209円で引けました。株価は全盛期の10分の1にまで下がっています。2月10日に自己株式の公開買付を発表したものの、株価は反応していません。市場の期待感は失われています。

代表執行役 岩田林平氏はノースウェスタン大学経営大学院でMBAを取得し、マッキンゼーに入社したエリート。しかし、クックパッドの業績を回復へと導く青写真が描けていないように見えます。例えば、クックパッドが長期の投資を行う上で重視している指標を決算時に説明していますが、「自宅での料理(昼食・夕食)頻度の世界平均」を挙げており、どこに向けて何を投資対象にしているのかがわかりません。

※決算説明資料より

また、2022年3月の株主総会で就任が決定した社外取締役のRaoul Oberman氏は2022年12月末に退任しています。Raoul Oberman氏はマッキンゼーでコンサルタントとして活躍し、中東やアジア圏の多国籍企業の経営陣や政府への豊富なアドバイス経験を有していました。

海外攻略の要と期待していた人物を早くも失いました。もし、国内事業を縮小して海外展開に期待をかけていたのであれば、出鼻をくじかれたことになります。

リストラ実施後の業績と経営戦略に注目が集まります。

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