コロワイドが再生型M&Aから業界再編型に舵を切る理由

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業績が伸び悩む外食企業を買収し、立て直しを図ることで成長を続けてきたコロワイド<7616>が、業界再編型M&Aを成長戦略として打ち出しました。中堅・大手外食企業などとの統合を進め、商品開発から材料の調達、物流までを一つのプラットフォームに載せて、店舗運営の効率化を図る狙いがあります。

しかし、それは表向きの話。同じくM&Aを成長エンジンにしてきたゼンショー<7550>などと比べると、コロワイドは経営効率の悪さが際立ちます。今回のM&A戦略の軌道修正は、同社ののっぴきならない事情が隠されているようです。

コロワイド「ビヤガーデン」
流行のタピオカもラインナップ(画像はレインズのビアガーデン)

外食売上高4強の中でROAが最低水準のコロワイド

コロワイドは居酒屋「甘太郎」などを運営している企業です。2019年3月期の売上高が前期比0.6%減の2443億6000万円。営業利益は3.8%減の40億8200万円でした。売上規模は日本マクドナルドホールディングス<2702>に次いで第4位です。

グループに、かっぱ寿司のカッパ・クリエイト<7421>や、牛角のレインズインターナショナル、ステーキ宮のアトム<7412>などを抱えています。2016年12月にフレッシュネスバーガーを買収し、ファーストフードにも進出しました。

コロワイドは、企業買収を主軸として成長してきました。そのほとんどが「再生型」と呼ばれるものです。業績がおぼつかなくなった企業を取り込み、再生させるのです。

そのため、どうしてもROA(総資産利益率)が悪化してしまいます。コロワイドのROAは1.2%と、外食売上高上位4社の中では最低です。

薄利多売で多店舗展開のゼンショーは4.8%

ROAは、利益を総資産で割って計算します。外食企業の場合、多くが店舗の固定資産です。その資産を上手く活用して、どれくらい利益を出しているかがわかります。売上の大きい外食企業4社を比べてみましょう。今回は経常利益(IFRSの場合は税引き前利益)を使って比較します。

企業名 ROA 売上高 経常利益 総資産
ゼンショー 4.8% 6076億7900万円 182億1100万円 3777億7900万円
すかいらーく 5.6% 3663億6000万円 185億9600万円 3306億7100万円
日本マクドナルド 12.9% 2722億5700万円 271億円 2100億3700万円
コロワイド 1.2% 2443億6000万円 27億1600万円 2223億100万円

※直近の決算資料をもとに筆者作成

コロワイドが突出して悪いのがわかります。マクドナルドが高いのは、フランチャイズ加盟店が多いために固定資産が少なく、総資産を圧縮できているからです。

薄利で多店舗展開する「すき家」を運営するゼンショーが、5%と高い水準を保っているのは意外です。同社は、ファミリーレストランのジョリー・パスタ<9899>を子会社しています。ジョリー・パスタのROAは16%と超優良です。

ゼンショーは経営効率の良い外食企業を買収し、上手く舵取りをして成長してきたのです。

コロワイドの子会社、カッパ・クリエイトのROAは2.6%です。同社は2017年3月期に、5億円超の営業赤字を出していました。コロワイドが買収したのは2014年。長い時間をかけてようやく稼げる体質になってきたとはいえ、経営効率は依然として良いとはいえません。

ROA わずか0.8%のフレッシュネスバーガーを8億円で買収

コロワイドのROAは、2017年3月期に0.9%にまで落ち込んでいました。カッパ・クリエイトの減損損失19億5500万円を計上したことが主要因です。減損損失は”膿みだし”とも呼ばれ、不採算店舗などの力を正しく評価して資産を圧縮し、ROAの向上や適正化に向けた動きとも受け止められます。

ところが、コロワイドは2016年12月にフレッシュネスを買収してしまいました。

フレッシュネス
10代女性に人気の「C CHANNEL」とタイアップしたフレッシュネスバーガー

フレッシュネスバーガーは売上高8億3900万円、利益は3300万円です。資産は39億7800万円で、ROAは0.8%と経営効率が非常に悪い会社でした。しかも、買収時は3900万円の債務超過だったのです。

その会社を8億円で買収し、資産として8億3900万円の「のれん」が積まれることとなりました。

この「のれん」がまたやっかいです。コロワイドの「のれん」は636億3000万円。総資産の28.6%を占めています。一方、同じくM&Aで成長してきたゼンショーの「のれん」は166億4400万円。総資産の4.4%ほどです。

コロワイドは、「のれん」を毎年償却しないIFRSを採用しています。「のれん」の大幅な減損がいつくるかわからない上、毎年の償却がないので資産が圧縮できずになかなかROAが向上しません。

今回打ち出した中長期成長戦略で、再生型から業界再編型へと舵を切るのは、優良企業を買収して、いち早く経営効率を高めたいという側面が潜んでいると考えられます。

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