日立「週休3日で給与維持」の新制度、残業代の削減が狙いかも…

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週休3日制は働く人の「味方」なのか?(写真はイメージ)

「屋根より高い人件費」-童謡「こいのぼり」の替え歌ではないが、企業にとって人件費の削減はバブル崩壊以来30年にわたる長期的な課題となっている。あの手この手の制度改革を繰り出してきたが、また新たなチャレンジが始まりそうだ。日立製作所<6501>が週休3日でも給与が減らない新勤務制度の導入を計画しているというのだ。

まとめて働けば「週休3日」に

とはいえ、勤務時間が短縮されるわけではない。月間の所定労働時間を柔軟に割り振ることで、週休3日を実現するのだ。これまでも同様の制度はあったが、1日3時間45分としていた勤務時間の下限を撤廃し、「0時間勤務日」を認めるという。

例えば月〜水曜日に10時間、木曜日に8時間45分働けば、同社の1週間の所定労働時間をクリアし、給与は維持しながら週休3日を実現できることになる。日本での週休3日制は介護や育児などでフル勤務が難しい従業員向けの就業支援策として導入され、給与も減額されるのが一般的だった。日立の新制度は週休3日と賃金維持を両立させる仕組みだ。

従業員にとっては「いいことづくめ」のようだが、「忙しい日には長時間労働し、暇な日は休め」という上司や職場からのプレッシャーがかかれば、体のいい残業代の削減につながりかねない。すでに同社は残業の発生を抑える裁量労働制を導入しており、残業代コストによる長時間労働の歯止めが効きにくい状態になっている。

長時間労働で生産性が落ちる可能性も

「IT関連の業務が増えたことで、労働時間と成果が必ずしも一致しなくなった」というのが、新しい勤務制度を導入する理由だが、実態は「IT関連業務の長時間化に伴う残業代コストの高騰」への対応だ。とはいえ、新制度による長時間労働で生産性が低下しては、企業が謳(うた)っている「成果」主義に反することになる。

厚生労働省がまとめた「健康づくりのための睡眠指針」によると、「認知・精神運動作業能力は、夜中の3時(17 時間覚醒)で血中のアルコール濃度が0.05%(日本では0.03%以上で酒気帯び運転)の時と同程度に低下し、翌朝 8 時(24 時間覚醒)にはさらに血中アルコール濃度 0.1%(およそビール大瓶1本飲用に相当)の時と同程度に低下することが示されている」という。

従業員が「長い休暇を取りたい」と自らの意思で長時間労働を選択する場合でも、作業効率や生産性が落ちる可能性が高いようなら、会社側が慎重に判断する必要もあるだろう。

残業代コストの削減は一目で分かるが、作業効率や生産性は見えにくい。だが、そこに留意しなければ「残業代は減ったが、それ以上に利益が落ち込んだ」という本末転倒な事態になりかねない。

文:M&A Online編集部

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