107年ぶりに高校野球で優勝した慶応高出身の有名経済人5選

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107年ぶりの快挙にわく慶應義塾高等学校。23日に甲子園で開かれた「第105回全国高等学校野球選手権記念大会」で、夏の連覇を目指していた仙台育英学園高等学校を破り、前身の大会である「第2回全国中等学校優勝野球大会」以来の優勝を果たした。

同校は慶應義塾大学の系列高校で、9割以上の生徒が慶応大に推薦で入学する。「慶応」と言えば、福沢諭吉による設立以来、実業界との結びつきが強く、多くの経営者を輩出している。その大半は大学からの塾生だが、慶応高出身の有名経済人も少なくない。代表的な慶応高出身経営者を紹介しよう。

堀切功章 キッコーマン会長

堀切功章キッコーマン会長(日本醤油協会プレスリリースより)
堀切功章キッコーマン会長(日本醤油協会プレスリリースより)

1951年生まれ。慶應義塾幼稚舎(小学校)、慶應義塾普通部(中学校)を経て慶応高校に入学。幼稚舎入学以降は千葉県流山市からの通学が難しかったため、両親と離れて東京で生活したという。高校時代は空手道部で活躍。慶大経済学部に進学後は、スキー同好会に所属している。

合併で誕生したキッコーマン創業家の一つである裕福な堀切家出身だが、「働かざる者食うべからず」の母の教えから、出してもらえたのは学費と生活費のみ。大学時代はスキー同好会の活動費用を工面するため、内装工事やビル解体、家庭教師、デパートの配送センターなどのアルバイトに明け暮れたという。

1974年にキッコーマン醤油(現キッコーマン)入社。2013年に社長就任、2021年から会長。酸化を防ぎ新鮮なおいしさを保つ密封ボトルに入った「いつでも新鮮」シリーズのヒットや、豆乳事業の拡大といった成果をあげた。経済同友会監査役や日本醤油協会会長といった財界・業界団体活動でも活躍している。

豊田章男 トヨタ自動車会長

豊田章男トヨタ自動車会長
豊田章男トヨタ自動車会長

1956年生まれ、愛知教育大学附属名古屋小学校・中学校を経て慶應高に入学。高校在学中に孫文やバラク・オバマ米大統領を輩出した、ハワイのプナホウ・スクールでも学んだ。慶大法学部に進学。米投資銀行勤務を経て、祖父の豐田喜一郞が設立したトヨタ自動車に入社する。

2009年に同社史上最も若い52歳で社長就任。2010年に新型「プリウス」のリコール問題で公聴会に召喚されるなど、就任早々からトラブルに巻き込まれた。しかし、2018年3月期決算でトヨタ史上最高益となる2兆4000億円を達成したほか、2019年3月決算では国内初の売上高30兆円企業に育てるなど経営手腕を発揮している。

「MORIZO(モリゾウ)」として「ニュルブルクリンク24時間レース」をはじめとする耐久レースやラリーに参加するなど、カーレーサーとしても活動している。2度にわたって日本自動車工業会会長を務め、業界の顔とも言える存在だ。2023年4月に同社会長に就任した。

星野佳路 星野リゾート社長

星野佳路 星野リゾート社長
星野佳路 星野リゾート社長(同社ホームページより)

1960年生まれ。軽井沢町立軽井沢中部小学校、慶應義塾中等部を経て慶応高に入学。中・高在学中はアイスホッケー部に所属し、中学時代に全国大会で優勝、高校時代には国体出場を果たしている。慶大経済学部に進学。日本航空開発(現・オークラ ニッコー ホテルマネジメント)の米国法人を経て家業の星野温泉の取締役に就任するが、経営方針を巡る対立により半年で退任。米シティバンク銀行でホテル事業の債権回収業務に当たった。

1991年に星野温泉へ再入社し、4代目社長に就任する。1995年に星野リゾートへ社名変更した。1999年にリゾート再生事業の一環としてデザインホテル「リゾナーレ」を引き受け、2004年には黒字化を果たす。

その後は「アルツ磐梯」や「アルファリゾート・トマム」といったスキーリゾートの再生にも成功。国内で最も有名なリゾート運営会社となった。2005年には100年の歴史を持つ祖業の星野温泉旅館を閉館し、「星のや 軽井沢」をオープン。これ以降、京都や竹富島、東京都心などで高級リゾート旅館「星のや」事業も展開している。

妻は慶応中等部、慶應義塾女子高等学校を経て慶大経済学部に進学した星野朝子日産自動車副社長。

玉塚元一 ロッテホールディングス社長

玉塚元一ロッテホールディングス社長(同社ホームページより)
玉塚元一ロッテホールディングス社長(同社ホームページより)

1962年生まれ。幼稚舎、普通部を経て、慶応高校に入学。中学時代からラグビーを始め、慶大法学部進学後はレギュラー選手として関東大学対抗戦で全勝優勝、全国大学選手権でも準優勝を果たしている。

旭硝子、日本IBMでの勤務を経て、「ユニクロ」や「GU」を展開するファーストリテイリングに入社し、2002年に社長就任した。2005年に企業再生を手がけるリヴァンプを設立。同社と経営委任契約を結んだロッテリアの会長兼最高経営責任者(CEO)に就任した。

2014年にローソン社長、2016年に同社会長を経て、2021年からロッテホールディングス社長。2022年から経済同友会副代表幹事に就任するなど、財界でも活躍している。福澤の「独立自尊」や小泉信三元塾長の「練習は不可能を可能にす」といった慶応での教えが人生訓になっているという。

祖父は日本証券業協会会長や東京証券取引所の理事長を務めた、玉塚栄次郎玉塚證券(現みずほ証券)元社長・会長。

竹本勝紀 銚子電気鉄道社長

竹本勝紀銚子電気鉄道社長(同社ホームページより)
竹本勝紀銚子電気鉄道社長、手にしているのは新製品のドッグフード(同社ホームページより)

1962年生まれ。千葉県木更津市出身で、まるでパルテノン神殿のような荘厳な校舎に一目惚(ぼ)れして慶応高に入学。高校での同期には、前述の玉塚氏や河野太郎デジタル相らがいる。慶大経済学部に進学。高校・大学時代は哲学や社会思想などに強い興味を持つ。アフガニスタンから来日したゲリラの取材やポーランドの自主管理労働組合「連帯」の学生メンバーによる講演会の司会など、国際情勢関連の活動にも関わったという。

大学卒業後に税理士となり、顧問税理士として経営危機にあった銚子電鉄をサポート。「ぬれ煎餅」のネット販売を手がけ、「ぬれ煎餅を買ってください。電車の修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」のキャッチコピーで大ヒットに。

ぬれ煎餅の売り上げで一時は1億円の営業利益をあげたものの、2011年の東日本大震災で業績は悪化。ついには会社の預金残高が50万円にまで減ってしまった。経営危機を救うべく2012年に就任した竹本新社長に、強力な「助っ人」が登場する。

2013年に立ち上がった同社存続を支援する「銚子電鉄運行維持対策協議会」だ。議長が同高出身の伊藤浩一銚子商工会議所会頭(当時)、副議長も同じく同高出身の坂本雅信銚子漁業協同組合長(同)という慶応高人脈。同協議会の働きかけで10年前から凍結されていた銚子市からの補助金が復活。これを受けて、千葉県からの補助金も出ることになった。

出身地の「木更津三田会」も銚子電鉄を支援すべく貸切列車を仕立ててくれるなど、慶応人脈による手厚い支援を受けている。竹本社長は「慶應義塾で『慶應電鉄』のネーミングライツをやってくれないだろうか」と、期待しているという。

文:M&A Online