【M&Aインサイト】白書が語る後継者不足の現状

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企業の約6割が後継者不在

 内閣府の2014年版「高齢社会白書」によると、国内の高齢者(65歳以上)の人口は過去最多の3,190万人に達し、高齢化率は25.1%と4人に1人が高齢者となった。企業経営者の約3割は65歳を超えており、国内企業の3分の2が後継者不在の問題を抱えているという。

 こうした社会的背景の中、帝国データバンクが全国28万4,412社を対象に後継者の有無を調査したところ、9万8,388社(34.6%)が「後継者あり」、18万6,024社(65.4%)が「後継者不在」との回答を得た。年齢別で見ると、社長が「80歳以上」の企業では3社に1社(34.2%)が後継者不在。将来の事業継承を見据え、後継者選定を始める必要のある「60歳代」では、半数強の53.9%が後継者不在であった。地域別に見ると「北海道」の後継者不在率が72.8%と最も継承準備が進んでおらず、「四国」は48.7%と企業の半数以上が「後継者あり」となった。業種別では「サービス業」の後継者不在率70.4%がトップで、次いで「建設業」の70.0%が続いた。

 また、売上規模別に見ると、「100億円以上」の企業で後継者不在率が25.7%であったのに対し、「1億円未満」の企業では4社に3社(76.6%)と占有比率が高く、小規模事業者の事業継承問題が深刻化していることが分かる。「後継者あり」の企業9万8,388社に後継者の属性を聞くと「自身の子ども」が38.4%でトップ。次いで「非同族」が30.7%、「親族」が19.9%であった。12年度以降に社長が交代した企業は、3万716社で、今回分析対象企業とされた28万4,412社の約1割(10.8%)で事業継承が行われた。業者別に社長交代率を見ると、「建設業」では調査対象5万1,387社中4,384社(8.5%)と最も低く、小売業も8.6%と低水準であるなど、この2業種において事業継承が進んでいないことが分かる。特に建設業においては、後継者不在率も70%に達するなど、事業継承への取り組みが急がれている。

 中小企業の中には「事業を継続したくても業績不振や先行きの見通しが見えないという理由から親族などに継がせたくない」と考えるケースも多く、事業継承問題の解決には、企業自体の業績回復が必要不可欠である。

出典:後継者問題に関する企業の実態調査:帝国データバンク
(月刊「ビルメンテナンス2014年11月号」より)