明暗分かれる婚礼企業、苦戦する椿山荘と早期黒字化を果たしたT&G

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藤田観光のホテル椿山荘東京

10月から繁忙期を迎える婚礼企業の明暗がはっきりしてきました。

業界大手のテイクアンドギヴ・ニーズ<4331>は、2022年3月期の通期営業黒字化を実現。2023年3月期は12億円としていた営業利益予想を66.7%増の20億円に引き上げました。

不調なのが名門結婚式場「椿山荘」を運営する藤田観光<9722>。2022年12月期上半期の婚礼事業は4億300万円のセグメント損失。前年同期間は14億8,600万円の損失で、赤字幅は縮まっているものの黒字化ができません。

コロナ禍による参列者の減少により、婚礼単価は減少傾向にあります。回復には時間がかかるとみられ、運営する結婚式場の数が少ない会社は苦戦が長期化する可能性があります。

この記事では以下の情報が得られます。

・婚礼企業の業績
・婚礼単価の変化

エスクリは家賃の高い場所への出店が災いか

ゲストハウス型の結婚式場を運営するツカダ・グローバルホールディング<2418>は、2022年12月期上半期婚礼事業のセグメント利益が20億7,000万円となりました。前年同期間は17億9,300万円のセグメント損失を計上しており、急回復しています。

同じくゲストハウス型ウエディングを全国展開するエスクリ<2196>は2023年3月期第1四半期においても黒字化ができていません。

■婚礼企業の営業利益の比較(単位:百万円)

2021年 2022年
テイクアンドギヴ・ニーズ
4-6月
104 1,590
ツカダ・グローバルホールディング(婚礼事業)
1-6月
-1,793 2,070
藤田観光(婚礼事業)
1-6月
-1,486 -403
エスクリ
4-6月
-590 -138

新型コロナウイルス感染拡大により、結婚式の延期措置をとる会場が多くありました。昨年の秋ごろから延期をしていた結婚式の施行がいっきに行われるようになります。テイクアンドギヴ・ニーズやツカダ・グローバルホールディングのように、ゲストハウス型結婚式場を全国に展開している会社は、数をこなすことができるために黒字化を果たしました。

藤田観光は主力の結婚式場が椿山荘と、2021年3月に創価学会に土地と建物を売却した太閤園の2つに限られます。福岡県や広島県などでゲストハウスを運営していますが、数は多くありません。バンケットをフル稼働させても、施行できる組数が限られるために黒字化ができないのでしょう。

多数のゲストハウスを出店するエスクリも、黒字化ができていません。エスクリの稼ぎ頭である結婚式場は、ターミナル駅近くにあるビルイン型。エスクリは、遠方から集まるゲストへの配慮をセールスポイントとし、他社との差別化を図りました。しかし、郊外型や駅から離れた場所を中心として出店するテイクアンドギヴ・ニーズなどの結婚式場と比べ、家賃が高額になるという特徴があります。

2022年4-6月のテイクアンドギヴ・ニーズの販管費率は59.9%、エスクリは61.3%でした。エスクリは家賃負担が重く、中長期的に黒字化しづらくなる可能性があります。

婚礼単価の減少で小規模事業者は運営が困難に

婚礼業界で懸念されているのが、1組当たりの婚礼単価と参加人数の減少。下のグラフはテイクアンドギヴ・ニーズの1組当たりの平均婚礼単価と平均人数の推移。単価は2023年3月期第1四半期に368万1,000円となり、コロナ前の2020年3月期と比較して6.7%減少しました。

※決算説明資料より筆者作成

単価が縮小している主な要因は参加人数が減少していること。人数はコロナ前と比較して14.6人減りました。三密回避のライフスタイルが染みついた日本において、一つの場所に大人数を集めることへの忌避感は続くでしょう。婚礼単価の完全回復には時間がかかるものと予想できます。

単価の縮小が長期化すると、バンケット数の少ない結婚式場はますます不利になります。婚礼業界は上場企業のシェアがわずか10%程度であり、全国の結婚式場の多くは中小企業が運営しています。今後、収益性の悪化した小規模式場運営会社を中心として、M&Aが活発化する可能性があります。

大手企業はアフターコロナを見据えて着実に準備を進めています。テイクアンドギヴ・ニーズはホテルの出店を強化しました。

■テイクアンドギヴ・ニーズのホテル出店計画

※決算説明資料より

すでにTRUNK HOTELを開業していますが、それに続くホテルの建設計画を進めています。2027年に神戸市に建設予定のホテルはチャペル・バンケット併設型。結婚式場を内包したホテルは、ゲストや新郎新婦の宿泊に使えるため、婚礼単価を上げやすいという特徴があります。婚礼単価が戻らなければ、宿泊と組み合わせることで底上げを図れます。

また、運営受託事業を行う面でもホテルの運営実績を持っていることは有利。テイクアンドギヴ・ニーズは、2022年4月からホテル「グランドパーク小樽」での婚礼部門の運営を受託しています。組数と婚礼単価の減少によって、多くのホテルで婚礼事業が重荷になる可能性があり、専門事業者に運営を委託するケースが増えるでしょう。婚礼企業がホテルの運営実績を持つことで、宿泊から宴会、レストランまで幅広く受託できるようになります。

テイクアンドギヴ・ニーズはホテルや婚礼の運営受託開発費を当初の計画から1億円引き上げ、PRや人員強化を行うとしています。婚礼業界が大きく変化しようとしています。

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