コロナが引き金を引いた若者の「結婚式ばなれ」で業界は大激震!

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もはや「盛大な結婚式が当たり前」の時代ではない(写真はイメージ)

「コロナ禍がウェディングビジネスを殺す」。明治安田生命保険の調査で、2019年10月以降に結婚した新婚カップルの58.8%が結婚式を挙げていないことが判明した。それ以前に結婚したカップルで結婚式を挙げていなかったのは20.4%なので、実に3倍近いカップルが挙式を見送ったことになる。

コロナ禍で結婚式の件数も金額も減少

緊急事態宣言が連続的に発令され、親族ですら結婚式への参列もままならない時期が続いたのが原因とみられる。実に6割近い新婚カップルが挙式しなかったという「異常事態」だ。若者の「結婚式ばなれ」が加速したとも言える。

挙式したカップルが結婚式にかける費用も減っている。結婚情報誌「ゼクシィ」を発行するリクルートによると、2020年度の結婚式(披露宴を含む)にかけた総額費用の全国平均は、前年度比70万円減の292万3000円だった。同社が全国調査を始めた2005年度以来、最低の金額だ。コロナ感染拡大を防ぐために招待客を絞り込んで、小規模な挙式にしたことがうかがえる。

件数と挙式費用の減少で、国内ブライダル産業は危機的な状況に見舞われている。東京商工リサーチによると、2020年度(2020年4月〜2021年3月)の結婚式場の倒産件数は、負債額1000万円以上に限っても前年度比28.5%増の9件と、2年連続で前年度を上回った。

このうち新型コロナ関連倒産は7件と、全体の8割近い。元々、少子化や非婚化で婚姻件数が減っていたところに、コロナ禍による挙式の延期や中止が相次いだのが響いた。

ブライダル業界でビジネスモデルの一新が必要に

一般に婚姻前のカップルは結婚式に費用をかけたがるが、入籍を先行して新生活を始めたカップルは「結婚式にお金をかけるよりも、今後の生活の足しにしたい」との意識が強く働くため、先延ばししていた式を挙げる場合も規模を抑えるケースが目立つ。

3月には海外ウェディングの火付け役となった上場企業のワタベウェディングが、コロナ禍による経営不振から私的整理の一種である事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請、受理された。その他にも多くのブライダル事業者が経営破綻に追い込まれている

最近では10月に沖縄県糸満市の結婚式場「サムシング・フォー西崎」を運営する運営会社のナカダが、新型コロナの影響で昨年4月から9か月にわたって披露宴の受注がなく、沖縄県の結婚式場としては初めてコロナ倒産した。同社はピーク時には年間200件以上の披露宴が開かれ、売上高は7億2000万円に達したという。地元で人気の結婚式場も、コロナ禍には勝てなかった。

問題はコロナ後にブライダル需要が復活するかどうかだ。コロナ禍で挙式を見送った兄弟姉妹や職場の先輩、友人たちから「そのお金を結婚後の生活に使った方が有用」とのアドバイスを受ければ、結婚式の見送りや簡素化が進むだろう。

日本の1人あたり所得の伸び悩みは長期化しており、かつてのような挙式費用の「親頼み」も厳しい状況だ。「親も子も経済的に苦しい」中で、結婚式のあり方が問われている。

葬儀ではコロナ禍で「家族葬」が当たり前になったように、結婚式も「家族婚」が常識になるかもしれない。ブライダル事業者が生き残るためには、「みすぼらしくない挙式のダウンサイジング」へビジネスプランを一新する必要があるだろう。

文:M&A Online編集部