営業赤字に転落したブルボンがバウムクーヘンに活路、マルキンに間接出資

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※画像はイメージ

「ルマンド」や「アルフォート」などのロングセラー菓子を手掛けるブルボン<2208>が、バウムクーヘンに活路を求めます。25%出資する特別目的会社(SPC)を通して、小売業向けバウムクーヘンの取扱量トップクラスのマルキン(愛知県豊橋市)の全株を2023年2月末に取得。ブルボンはマルキンと業務提携契約を締結します。

ブルボンは2023年3月期上半期に営業赤字となりました。原材料とエネルギー価格の高騰、値上げによる買い控えの影響を受けています。2017年3月期以降は売上高の伸び悩みも目立っていました。

この記事では以下の情報が得られます。

・ブルボンの業績推移
・業績が軟調な理由

原材料高と販売数の伸び悩みというダブルパンチ

マルキンは1964年1月の丸金製菓有限会社が前身。1986年8月にカップケーキの製造を開始しました。現在は、スーパーマーケットやドラッグストアなど全国の小売店向けのバウムクーヘン、ドーナツ、プチケーキなどを製造しています。

※マルキン「『爽やかに薫る 紅茶のケーキ レモンティー』を新発売!」より

投資ファンド・シンクローバーキャピタルマネジメント(東京都渋谷区)が組成したSCCM地域創生投資事業有限責任組合が、2019年6月にマルキンの全株を取得。その株式を、キャス・キャピタル(東京都千代田区)とブルボンが共同出資する特別目的会社が取得します。ブルボンは特別目的会社に25%を出資しています。

マルキンの2022年3月期の売上高は50億7,500万円でした。

マルキンは「厚切りカットバウム」などの定番商品を抱えており、価格も200円程度と安価で提供していることから人気があります。公式SNSでは自社のバウムクーヘンやマフィンを使ったレシピの投稿を行うなど、マーケティングにも力を入れています。

ブルボンはマルキンに新製品開発、営業、マーケティングノウハウを提供し、事業の成長を後押し。また、仕入れの一部統合を図るなどシナジー効果を高めて収益性と企業価値向上に努めるとしています。

更なる成長力をつけた後、キャス・キャピタルから株式を譲受し、子会社化することを視野に入れているものと考えられます。

ブルボンは業績の伸び悩みが鮮明になっていました。2023年1月30日に通期業績の上方修正を発表し、営業利益を従来予想の2倍となる10億円に改めました。しかし、営業利益率は2022年3月期と比較して3.4ポイントも落としています。

※決算短信より

ブルボンは2023年3月期通期を増収と予想していますが、上半期は前期比2.9%の減収で着地し、2億7,500万円の営業赤字(前年同期間は17億9,400万円の営業黒字)を計上しました。

穀物やエネルギー価格高騰のあおりを受け、2022年5月から値上げを実施。主力商品の「アルフォート」や「ガトーレーズン」の価格を5%引き上げました。また、一部商品の内容量を変更し、「エリーゼ」は44本から40本に減らしています。

※「一部商品の価格改定ならびに内容量変更に関するお知らせ」より

これが裏目に出ました。値上げをした商品の売れ行きが伸び悩み、減収へと繋がってしまいます。

コスト面では原価率が73.9%から77.4%まで3.5ポイントも上昇しました。コスト高を上手く価格に転嫁できず、減収となって原価率が上がり、赤字転落という負のスパイラルに陥りました。

※決算短信より

チョコレートの人気領域で存在感を発揮できない

原材料やエネルギー高の影響は、他の大手菓子製造企業の業績にも打撃を与えています。森永製菓<2201>は2023年3月期の営業利益が2.9ポイント、明治ホールディングス<2269>は1.3ポイント落ちる見込みです。

しかし、ブルボンは競合他社と比較して悪化する様子が際立っています。

しかも、国内の菓子市場は中長期的には縮小の道を辿っています。

富士経済の調査によると、2021年の菓子の市場規模は前年比0.4%増の1兆2,379億円と横ばい。2026年は2.8%減の1兆1,985億円と予測しています。菓子は少子高齢化による内需縮小の影響を強く受けています。

現在、菓子市場を下支えしているのは、外食が減って家庭内での飲酒機会が増えたことによるおつまみ系スナック菓子。ブルボンにはこの領域に強みを持つ商品がありません。ブルボン主力商品の一つ「アルフォート」のチョコレート菓子は、明治の「チョコレート効果」や江崎グリコの「GABA」のように健康志向、機能性を前面に出したものへと人気が移行しています。ブルボンは「MCTプラスベイクドショコラ」など機能性の高い商品を開発、販売していますがヒットには結びついていません。

過去5年を振り返っても、ブルボンが目立ったM&Aを行った形跡はありません。今回の間接的なマルキンへの出資と、業務提携契約の締結は、経営の方向性を大きく変える可能性があります。業務提携後の動向に注目が集まります。

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