「特殊状況下における取締役会・株主総会の実務」|編集部おすすめの1冊

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数あるM&A専門書の中から、新刊を中心にM&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。選書の参考にしてみては? 

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「特殊状況下における取締役会・株主総会の実務」竹平征吾ら4氏共著  商事法務刊

アクティビスト(物言う株主)ブームが到来したといわれる日本。世界的な「カネ余り」や安倍政権のコーポレートガバナンス改革の流れを受け、経営改善や株主還元に向けた株主提案が勢いづき、外資系ファンドの日本参入も活発化している。上場企業であれば、いつ何時、アクティビストの標的になるかもしれない。

そんな「有事」における取締役会・株主総会の運営ではどういった実務対応が求められるのか。本書は「特殊状況下」と銘打ち、4つの有事の場面を設定した。具体的には①アクティビストの登場②MBO(経営者による買収)、敵対的TOB(株式公開買い付け)などのM&A③内紛(代表取締役の解職などの社内対立)④不祥事発覚時ーで構成する。

「特殊状況下における取締役会・株主総会の実務」

第1章ではまず、アクティビストが登場して株主提案などが行われた場面を取り上げた。アクティビストとの対話・交渉、買収防衛策の取り扱い、株主総会の準備・運営などの各プロセスについて要点を詳解。本文約260ページのうち、この第1章だけで4割以上の120ページほどを割き、アクティビスト対策への企業の関心にこたえる内容になっている。

旧村上ファンド系の関係企業が関与し、買収防衛策を巡って法廷闘争に発展した「ヨロズ事件」(2019年)をはじめ、最近注目を集めたアクティビストの動向にも随所に言及している。

第2章ではM&Aの「特殊状況下」として、MBO、上場親会社による上場子会社の完全子会社化、敵対的または対抗的TOBの開始、さらにこれらM&Aの過程で反対株主が登場した場合を想定し、法的な論点を解説する。

取締役会が真っ二つに割れた挙句、代表取締役を解職するといった内紛はマスコミの好餌となり、社会的な信頼を失い、業績への悪影響も大きい。不正会計、施工不良といった企業不祥事もしかりだ。まさに「特殊状況下」にほかならない。

「特殊状況下」ならではの問題点や留意点を整理しており、有事における実務対応の虎の巻といえる一冊だ。巻末資料のアクティビストによる株主提案一覧、委任状勧誘規制に基づく提出書類サンプル、日本での敵対的TOB例も大いに参考となろう。(2020年3月発売)

文:M&A Online編集部