数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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『日本型PMIの方法論』中堅・中小企業を成長させるポストM&Aのプロセス 竹林 信幸 著・プレジデント社 刊
売り手企業と買い手企業がともに成長することを目的にまとめられたのが本書。M&A前後の経営者や事業会社でM&Aにかかわる担当者向けに、実践的なノウハウとして活用できるように仕上げてある。
もちろん、これからM&Aにかかわるであろう人たちにPMIがM&Aの後で行われる組織や業務の統合作業を指し、このPMIがM&Aにおいて非常に重要であることなどの基本的な内容についてもページを割いている。
核心部分では経済同友会が実施したアンケートの結果、M&Aを成功させるために求められるものは何かという質問に対し、約6割の経営者が「異なる企業文化への対応」と答え、さらにM&Aを実施した際に苦労したことは何かとの質問には8割近い経営者が「企業文化の融合」と答えたことを紹介。
そのうえで「相手の文化を変えたり、互いの文化を融合させたりしてひとつの文化にするのは大変な困難が伴う」とし、「日本企業の多くは企業文化の融合にこだわり、自らの手でPMIを難しいものにしているのではないか」と疑問を投げかける。
そしてその解決のヒントがダイバーシティ=多様性の考え方にあると結論づける。売り手企業、買い手企業双方の背景の違いを尊重し、押しつけをなくすことが重要であり、PMIを異文化コミュニケーションと捉える姿勢が重要と強調する。
あとがきでは「すべてのM&AにはPMIがある。伝えたかったのはこの一言に尽きるかもしれない」といい、さらに「PMIなくしてM&Aの成功なし」とも付け加える。
著者は大手生命保険会社や国内外のコンサルティング会社などを経て、M&A仲介会社の日本M&AセンターでPMI支援に携わってきた。現在は日本M&Aセンターが2018年に4月に設立した日本CGパートナーズの取締役。同社はM&A後に売り手企業と買い手企業が成長するために必要な会計や、ビジネスのコンサルティングを手がけている。(2019年3月発行)
文:M&A Online編集部