数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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M&Aで外食は年商30億円を突破できる: M&Aは成長戦略のニュースタンダード
照井 久雄 (著) 柴田書店
中小の外食企業にとって年商30億円が一つの壁とされており、これを早期に達成する最も有効な戦略がM&Aであるという考えのもとに、執筆されたのが本書。
筆者は成功するM&Aを一言で言うと何ですかとの質問には、同じ志を持った仲間がより大きな企てを実現するために一緒になることを意味する「同志的結合」であると答えるという。
本書で具体的事例として紹介しているクリエイト・レストランツ・ホールディングスが掲げる「グループ連邦経営」や、DDホールディングスの「一緒にやりたい経営者と一緒になる」という考え方は「同志的結合」と同じであると分析する。
三章構成で、第一章は「知っておくべきM&Aの基礎知識」として、M&Aの手法や進め方、財務や労務のデューデリジェンスなどを紹介。さらに外食企業が注意しなければならない賃貸契約やフランチャーズ契約などについても言及した。
第二章の「実例で学ぶ、外食企業のM&A戦略」が本書の核ともいえる部分で、クリエイト・レストランツ・ホールディングス、DDホールディングスのほかに、ダイネット、こころ、越後屋の事例を紹介した。
例えば、クリエイト・レストランツ・ホールディングスの岡本晴彦社長は「M&Aは本来、異質な企業文化を取り入れたり、自らの企業文化を変えるために行なうものだと思います。過去を否定し、それまでとは違う企業として進化していくのが目的。それこそがM&Aによって生まれるシナジーであって、統合による効率化とかスケールメリットはM&Aの本質ではないんです」と語っている。
他の企業もそれぞれに考えをもっており、M&Aの目的や、やり方が少しずつ異なる。同じ外食企業であってもM&A戦略は各社それぞれであることが分かる。
第三章は「台頭するファンドのM&A活用事例」で、ハゲタカのイメージのあるファンドが変貌し、M&Aの重要なパートナーになっている実態を紹介している。
アドバンテッジパートナーズ/おいしいプロモーションの事例と、アント・キャピタル・パートナーズ/スプラウトインベストメントの事例の2例を取り上げ、ファンド責任者の談話を掲載した。
(2018年9月発行)
文:M&A Online編集部