数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識や教養として役立つ本も紹介する。
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こんな新聞の楽しみ方があったのかと思わず膝を叩いてしまう。人気時事芸人の著者が新聞のおもしろくてディープな読み方を伝授する。
インターネット全盛の中で、新聞は甚だ分が悪い。読者離れが止まらず、旧態依然の象徴とまで言わたりする。そんな新聞のことを、著者は一般紙、スポーツ紙、夕刊紙・タブロイド紙をまるごとひっくるめて「オヤジジャーナル」と呼ぶ。
「オヤジジャーナル」の特徴は「辛口で、上から目線で、でも下世話」なところ。上から目線の最たるものが一般紙の社説。お説教のテーマが地球の裏側のことにまで及ぶ社説を「大御所の師匠」の言葉として読むことを提案する。「ああ、また師匠が何か大層なことを言ってるぞ」と思えば、がぜん楽しくなるというのだ。
一方、下世話を代表するのが夕刊紙・タブロイド紙。東京スポーツ、日刊ゲンダイ、夕刊フジだ。玉石混交の記事の中に宿る真実を読み取ることに醍醐味があるという。
著者は新聞をことさら称賛するわけでもなく、軽々に批判するわけでもない。私たちの代わりにプロの記者が情報を精査しているのだから、それを利用すればいい、というスタンスだ。その際、各紙の立ち位置を頭に入れて読めば、新聞の楽しみ方のレベルがさらに上がる。
著者が提唱するのが新聞を野球場にたとえること。例えば、安倍政権という野球場では1塁側(ホーム)が政権を支持する読売・産経、3塁側(ビジター)が政権に批判的な朝日・毎日・東京といった具合だ。どの新聞が1塁側なのか、3塁側なのかを考えながら読むと、新聞の違いが分かり、おもしろさが増す。
「オヤジジャーナル」の中でもお堅いイメージがある一般紙。著者は各紙のキャラを親しみを込めて、次のように解説する。いずれも言い得て妙だ。
▽朝日新聞=高級な背広を着たプライド高めのおじさん、▽毎日新聞=書生肌のおじさん、▽産経新聞=いつも小言を言っている和服のおじさん、▽東京新聞=問題意識が高い下町のおじさん、▽日本経済新聞=現実主義のビジネス一筋おじさん、▽読売新聞=“ナベツネ”(最高実力者・渡邉恒雄氏の通称)
ネットの世界でフェイクニュースが大きな問題になる中、新聞の重要性が増しているのも事実だ。著者はふだん12紙に目を通しているという。ニュースとの付き合い方のコツを知れば、新聞を手に取ってみたくなるに違いない。(2019年4月発売)
文:M&A online編集部