数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識や教養として役立つ本も紹介する。
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『野球が教えてくれたこと』 栗山 英樹 著(KADOKAWA刊)
「野球が上手くなるにはどうしたらいいですか?」。野球少年からそんな質問をされると、必ずこう答えるという。「本当に野球が好きだったら勉強をしないさい」。
「野球は好きだけど、勉強はやる気がしない」というなら、それは君が思っているほどには野球に対するモチベーションがないのかもしれない。 野球においても、人生においても、「勉強がすべて」と著者は言い切る。
北海道日本ハムファイターズを率いて8年目のシーズンを戦う栗山英樹監督が中学・高校生の「君」に贈る一冊。野球から得てきた“生きるヒント”が詰め込まれている。
持論の一つが「野球を極めたければ、野球以外のことをしろ」。野球以外のところに、野球のヒントがたくさんあるというのだ。現在持っている野球の能力にプラスアルファ、人とは異なる武器を持つことにほかならない。
例えば、読書。本の中の文章や言葉がまったく関係のないところで助けてくれることがある。それが野球かもしれないし、人間関係かもしれない。
栗山監督は昨年までの7シーズンでパ・リーグ優勝2回(2016年に日本シリーズ優勝1回)を含めてAクラス入り5回の成績で、今や名将の呼び声が高い。だが、野球エリートでは決してない。自身が語るように、常に「王道」を外れてきた。
中学でバレーボール部、高校では甲子園出場が及ばず、大学は国立(東京学芸大学)の弱小野球部。それでもドラフト外でヤクルトスワローズに入団。俊足巧打の外野手として頭角を現すが、持病のメニエール病が悪化して現役7年間、29歳でユニフォームを脱いだ。
引退後はスポーツキャスター、大学教員として活躍。2012年に日本ハム監督に就任し、1年目でリーグ優勝に導いた。
この年のドラフトで1位指名したのが大谷翔平選手。投打の二刀流を誰よりも後押しし、大リーグ行きの後ろ盾となったのが栗山監督だ。「才能以前に、野球への取り組み方、志が何より大切であることを証明してくれた」と大谷を評する。
本書ではまず、「教え子に学ぶ」として大谷をはじめ、中田翔、斎藤佑樹、清宮幸太郎の4選手を取り上げ、監督としての接し方や指導のあり方を詳述している。続く「高校野球に学ぶ」「恩師に学ぶ」「挫折に学ぶ」の各章では栗山監督のバックボーンの一端をうかがい知ることができる。
本書に通底するのは氏の野球への限りない愛情と深い敬意、そして学びの精神といって差し支えないと思う。野球少年だけでなく、大人にも気づきを与える一冊に相違ない。(2019年3月28日発売)
文:M&A Online編集部