『会社の相続』事業承継のトラブル解決|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識や教養として役立つ本も紹介する。

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『会社の相続』事業承継のトラブル解決 後藤 孝典 著(小学館 刊)

「痛くない注射針」の開発で知られ、中小企業庁の「元気なモノ作り中小企業300社」にも選ばれた岡野工業が後継者難で廃業を選択し、モノづくりにかかわる人々を震撼させた。独自技術があり、黒字経営にもかかわらず廃業に追い込まれる中小企業は決して珍しくない。今や廃業件数は倒産件数の3倍以上であり、中小企業の「死因」では最もポピュラーな理由になっている。

そんな中、注目されているのが「事業承継」だ。しかし、中小企業の事業承継には危険がいっぱい。株式の相続税対策は?相続権を持つ親族から遺留分を請求されたら?名義株の相続を受けた親族が経営に干渉してきたら?事業承継のためオーナー一族に債権放棄を求めることはできるのか?

本書は小説パートと「法律問題の解説」の二本立てで、8つの事業承継のトラブルとその解決策を平易に解説している。赤字経営の同族企業をオーナー家の債権放棄により最小限の負担で従業員へ事業承継する方法や、相続人がいない弟の急死で72歳にして企業の全株を引き継ぐことになった元看護師が自社株の売却により相続税を捻出しながら属人株で経営権を維持する裏技など、中小企業の事業承継で直面する問題をほぼカバーしている。

単なる「ノウハウ解説本」に留まらず、弁護士でもある筆者の主張も読みどころ。民法相続編改正のほか、平成30年度の税制改正で中小企業株式の相続税がゼロに引き下げられるなど、事業継承を円滑にする制度改革は進んでいる。それでも事業承継を取り巻く環境は厳しいと著者は指摘する。

事業承継の何が問題なのか?実際に世代交代で頭を痛めている人だけでなく、日本経済を底支えしている中小企業の現実を知る上でも参考になる一冊だ。

文:M&A Online編集部