一族内紛争を予防・解決するファミリーガバナンスの法務・税務|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Onlineがおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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一族内紛争を予防・解決するファミリーガバナンスの法務・税務 大石篤史・間所光洋・中田光彦 ・安部慶彦・片山和紀著、中央経済社刊

「親戚縁者を巻き込んだ骨肉の争い」と言えば、真っ先に遺産相続が思い浮かぶ。しかし、もっと厄介なのがファミリー(オーナー経営)企業の親族内事業承継だ。

遺産相続であれば親族内のゴタゴタで済むが、親族内事業承継がこじれると企業の存続が危うくなり、従業員や取引先にも多大の迷惑をかけることになりかねない。

同書は森・濱田松本法律事務所に所属する弁護士と税理士が法務・税務面から一族内紛争を回避するための仕組みづくり=ファミリーガバナンスの指南書である。

その根幹となる考え方は「一族前全体」の利益よりも、ファミリーを構成する「各人」の利益の増大を重視することだ。

専門家の視点から一族内紛争の原因や解決策、法律・税務上の処理などを解説している。一般的な親族だけでなく、認知や内縁関係者との相続や贈与といった「生臭い」状況を含めるなど、非常にきめ細かい。

専門知識がなくても楽しめるコラムも掲載している。ファミリーガバナンスの成功事例として、独メルク家や米J.Mフーバー家、三井家などを紹介。それそれ独自のやり方だが極めて合理性の高い手法であり、中小企業のファミリーガバナンスにも応用できる。

中小企業の廃業が注目されているが、後継者不足に加えて親族内のごたごたによる「空中分解」も珍しくない。中小企業経営者の高齢化が進んでおり、適切なファミリーガバナンスの導入と実行は急務と言える。一族経営の企業関係者には必読の書だ。(2023年3月発売)

M&A Online Newsroom