数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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「イナズマメソッドで成功する事業承継」 小規模企業知的資産経営実践研究会著、きんざい刊
2020年版中小企業白書によると2019年に休廃業、解散した中小企業は4万3000社ほどで、そのおよそ6割が経営者の高齢化や後継者不在が休廃業、解散の理由だった。
こうした後継者不在による廃業などが起こらないように、しっかりと経営のバトンを引き継ぐのに役立ててもらおうとの思いから、小規模企業知的資産経営実践研究会(東京都中小企業診断士協会三多摩支部内の組織)のメンバーが書き上げたのが本書だ。
書名のイナズマ(INASMA)メソッドのイナズマは、 知的資産経営を意味する英語のIntellectual asset managementの各単語の先頭2文字からとったもので、事業の中身と状況を整理して説明しやすくするツールとして同研究会が2012年に開発した。
イナズマメソッドは商流分析(外部環境分析)と社員力診断(内部環境分析)から構成されており、目に見えない知的資産を見える化し分析、診断することに重きを置いている。見える化された知的資産は、企業存続のために必要な強みとなるため、当該企業の事業性評価につながる。
このことからも分かるように、イナズマメソッドを使えば即座に事業承継が完了するというものではなく、その活用方法がポイントとなってくる。
第1章では日本の中小企業の実態から事業承継の課題、後継者づくりなどを取り上げ、第2章では知的資産とは何なのかを解説。第3章ではイナズマメソッドがどのようなものなのかをまとめた。
第4章で親族内承継、内部昇格、M&Aの三つのタイプ別に14社の事業承継の事例を紹介。各社の事業承継過程を踏まえ、円滑な事業承継のためにイナズマメソッドがどのように活用できるのかに言及している。
第5章は後継者に向けた内容で、新事業を検討する際のヒントや会計、企業分析法などの紹介のほか、後継者の理想像や後継者育成機関などについて触れている。
同研究会では事業承継に直面している経営者はもちろん、事業承継にイメージの湧かない後継候補や事業承継の相談を受けている中小企業支援者や金融機関の担当者らにも読んでほしいとしており、さらに第4章の事例をまず読み、その後に事業承継に関する基本的な情報を盛り込んだ第1章から第3章を読むことを薦めている。(2023年3月発売)
文:M&A Online編集部