チェーンストア経営者の必読書「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」

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ウォルマートCEOからエグゼクティブへの宿題!チェーンストア関係者の必読書?

編集部おすすめの1冊 vol.24『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』(日経BP社)

今回は、米国在住流通コンサルタントの後藤文俊氏おすすめの「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」を紹介します。

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あなたがグローバル企業のCEOとなったら、役員や部下にどんな本を読ませたいか?

ダグ・マクミラン氏が昨年2月、ウォルマートCEO就任した。就任から数週間後、マクミラン氏が役員会で出席者に渡した本がある。世界ナンバーワン企業のエグゼクティブに課された宿題は、ライバル企業アマゾン創業者ジェフベゾスの伝記を読むことだった。その本とは、ジャーナリストのブラッド・ストーン氏が書いた「ジェフ・ベゾス 果てなき野望(The Everything Store)」だ。ハードカバーの原文では400ページ近くもあり、日本語訳では500ページを超える大作となる。ジェフ・ベゾス氏の生い立ちも含め、アマゾン創業時から今にいたるまで詳細に書かれている。

ジェフベゾス氏はアマゾンをウォルマートの「スピード」と「実験」を手本に巨大企業にした。一貫した信念を持ってアマゾンを成長させた軌跡をウォルマートの若きCEOが学ぼうとしていたのだ。ウォルマートのエグゼクティブが学ばせようとしたのはベゾス氏がウォルマートから学んだスピードや実験だけではない。オンラインショッピングと言う新たな潮流に対して、大手チェーンストアのトップや役員が学ぼうとしなかった。アマゾンがオンライン通販で急成長している時でさえ、大手チェーンストアが業界の慣習や小売の常識に囚われてしまっていた。過去の成功体験の呪縛から、小売の将来を見誤ったことが記されていることを読ませたかったのだ。ネット通販で致命的に出遅れてしまった教訓を共有したかったのだ。

世界一の小売企業ウォルマートが読んでいる本だ。チェーンストアを標榜する日本の経営者や役員、関係者にとっては必読書となる。

本書はこう読め!選者のコメント

こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」について後藤はまず、原文を読みました。原文のタイトルは「ザ・エブリシングストア(The Everything Store)」です。重要なところやポイントになる箇所にアンダーラインを引きながら読みました。その後に日本語訳を読んだのです。

日本語版を読み始めて最初に気づいたのは、アンダーラインを引いた重要箇所を日本語訳ではスルーしそうになったことです。なぜかというと翻訳のせいで重要と思われる意味がぼやけた感じになってしまっていたからです。翻訳が間違っているわけではないのです。が、ニュアンスが微妙に原文と異なるのです。理由の一つは、句点によって分けられた一つづきのワンセンテンスを、そのまま日本語でも長い1文にしているからではと思っています。複文で長くなったワンセンテンスも、日本語では2つ以上にパート分けで訳したほうがいいでしょう。直訳より意味訳のほうがいいのです。

例えば、リテーラー(retailer)という英語。一般的に「小売店」と訳されます。ただ、文章の前後の流れや文脈から「小売店」よりも「チェーンストア」「大手チェーンストア」と訳したほうがしっくりくるのです。日本語訳でも、いくつか散見されました。「小売店」のイメージは「売店」とか、パパママストアのような小さなお店を連想させます。それからアマゾンの成長に欠かせないのが物流の進化です。これは仕方がないことなのかもしれませんが、ディストリビューションセンターを物流センターと訳してしまっているのですね。フルフィルメントセンターと混同してしまうような箇所がありました。一般の人が読むには問題はありません。が、流通関係者が読むには面白さが半減するような気がしました。些細なことかもしれませんが、オムツなどをネット販売するダイパーズ・コム(diapers.com)をダイアパーズ・コムと表記していました。ダイアパーズって何?思いました(笑)。

「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」は中立的に書かれていますが、読む人の立場によってアマゾンやジェフ・ベゾス氏の印象が変わります。経営者以外の人にとって、アマゾンは従業員を酷使するブラック企業であるようなイメージを持たれる方が一般的に多いのではと推測します。

顧客志向第一と謳っている反面、倉庫での過酷な労働環境とか、役員にも高い要求をぶつけ、気に入らないと辺りかまわずどなり散らすところ(退職する社員もかなり多い)など、関係者としてアマゾンやジェフ・ベゾス氏に関わりたくないような気分にさせます。競争相手やパートナーに対してでさえも、自社に有利となれば徹底的(偏執狂的というか)に利用していくところは寒気さえ感じます。キンドル発売時での出版社との強引で際どい交渉術や、強烈な価格競争を仕掛けザッポスを屈服して飲みこんでしまう買収策など枚挙にいとまがありません。ただウォルマートCEOのダグ・マクミラン氏はこの本を違った見方で読んでいるのですね。

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

文:後藤文俊(流通コンサルタント)
※「激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ」より転載