会社オーナーの事業承継をアドバイスする!「株価算定士」入門|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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会社オーナーの事業承継をアドバイスする!「株価算定士」入門 森田征生著、ビジネス教育出版社刊

「企業価値」を測定する方法はいくつかある。中でも最も単純明快なのは株価の算定だろう。上場企業では証券市場で株価が決まるが、非上場企業にも当然ながら額面とは違う「株価」が存在する。そうした株価の算定方法について解説した入門書だ。

会社オーナーの事業承継をアドバイスする!「株価算定士」入門

タイトルにある「株価算定士」という資格は実在しない。公認会計士や税理士がそうした実務に当たっているが、中小企業経営者や一般のサラリーマンでも知識があれば「株価算定士」の役割を果たすことは可能だ。

だが、上場していない中小企業の株価を算定する必要はあるのだろうか?実はある。「相続・贈与」「M&A」「事業承継」などの局面で、株価を算定する必要に迫られるのだ。本書はそれぞれの局面で、どのような算定方法があるのかを指南する。

ただ株価を算定して終わりではない。事業承継においては、生前贈与に代表される株式所有権の移転や、第三者割当増資、転換社債発行などのファイナンスの実施といった手法がある。それらのコスト比較など、それぞれの局面での適切なアドバイスについても丁寧に触れている。

相続税や贈与税の負担が重い親族内の株式所有権の移転は、わが国の事業承継を妨げる要因になっている。そのため国も税制改正を実施しているが、万全とは言えない。

本書でも自社株の相続税評価額の引き下げや自社株の持ち株比率の引き下げ、納税資金の確保といった具体策についても解説している。

M&Aはともかく、事業承継や相続はどの中小企業も避けられない。中小企業経営者やその親族にとっては必読の書だ。それ以外の一般の読者にとっても株価の算定手法を知っておくことは、自社の企業価値を把握したり、M&Aや事業承継の実務を知ったりするのに役立つだろう。(2022年2月発売)

文:M&A Online編集部