「経営者交代 ロッテ創業者はなぜ失敗したのか」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

経営者交代 ロッテ創業者はなぜ失敗したのか」松崎隆司 著、ダイヤモンド社 刊

日本の大手菓子メーカーであるロッテのほか、韓国のロッテホテルやロッテ百貨店など日韓にまたがる企業グループであるロッテの創業者・重光武雄氏の事業承継にかかわる準備や抗争、結末、教訓などをまとめたのが本書だ。

ロッテは製菓やホテル、百貨店のほかにも石油化学や流通、映画、レジャー、建設など幅広い分野で事業を展開しており、韓国の財閥の一つに数えられる巨大企業で、戦前に渡日した重光武雄氏が一代で築き上げた。

武雄氏は長男と次男に、この巨大グループを承継するために、30年近くをかけて資本構成を再編して準備を整えていたが、反旗を翻した次男が兄を追い落とし、創業者である父親を追放し、自身がロッテの後継者となった。

経営者交代 ロッテ創業者はなぜ失敗したのか

この経営権を巡る争いの原因や経緯を、武雄氏に仕えたロッテの元幹部や関係者への5年にも及ぶ取材と、残された資料などを基に整理し、なぜ事業承継は失敗したのか、なぜ次男はそのような行動をとったのかなどについて明らかにした。

兄弟2人の性格の違いや、2人が手がけた事業、失敗の隠しの手段、韓国企業の特徴などについて触れたほか「承認欲求」「失敗恐怖」といった心理面の分析にも言及している。

最終章では、ロッテの失敗から学ぶ事業承継の教訓として「後継指名を公の場で正式に行う」「後継者に経営理念も承継せよ」「万全の備えを崩す欠陥を見逃すな」など七つを挙げた。

そのうえで最後に京セラ創業者の稲盛和夫氏の「おもしろくもない人生に耐える経営者でなければ、従業員も幸せにできないし、株主もお客様も幸せにできない」との言葉を紹介。

事業の大小を問わず、事業承継には周囲の人たちに恩恵をおすそ分けしていく「利他の心」を持ち、おもしろくもない人生に耐える経営者であり続けられることが重要であると、締めくくった。

ロッテという大企業の事例ではあるが、家族への事業承継を考えている中小企業経営者には大いに参考になりそうだ。(2022年2月発売)

文:M&A Online編集部