数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
「SWOT分析による戦国武将の成功と失敗」 森岡 健司著、ビジネス教育出版社刊
武田勝頼、上杉景勝、北条氏政ら、戦国武将は先の見えない時代に生き残りをかけて戦う戦国時代の経営者。
一方、SWOT分析は、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素ごとに、プラス面、マイナス面に分けて分析するもので、戦略策定やマーケティングの意思決定などに用いる。
戦国武将が行った事業承継やブランディング、人事、生存戦略などを、SWOT分析の手法を用いて、現代のビジネスで参考になるようにまとめたのが本書だ。
3人のほかに、伊達政宗、真田幸村、島津義弘、柳生宗矩ら12人の戦国武将を実例として取り上げ、戦国武将たちの強みや弱み、置かれている環境などを分析した表も載せている。
例えば第1章の一番目に取り上げた武田勝頼では「偉大な先代を継ぐ二代目の成功と失敗」をテーマに戦国武将の事業承継にスポットを当てた。
武田勝頼は父武田信玄の跡を継ぎ、100万石の領地と武田二十四将と呼ばれる有能な家臣団を引き継いだが、わずか10年で織田信長によって滅ぼされてしまった。
勝頼は武勇(武術にすぐれ勇気があること)に優れた武将で、現代であれば、初めての飛び込み営業でいきなり大口顧客との契約を結んでくるような高い営業力を備えたビジネスマンであったという。
この時期の武田をSWOT分析してみると、勝頼の武勇は武田家の強みであったが、古参家臣との関係性の悪化という弱みや、信長包囲網の弱体化という外部環境の変化、さらには織田家の勢力拡大という脅威もあった。
こうした環境から判断すると、勝頼が採るべき行動は信玄に負けない実績を示すことではなく、古参家臣団や周辺同盟国との地道なコミュニケーションによる関係性の再構築であったと、著者は結論づけている。
さらに現代においても、後継者は派手な実績作りに走るのではく、メンバーとのコミュニケーションこそ優先すべき施策であると武田家の事例は教えてくれていると結んでいる。(2021年10月発売)
文:M&A Online編集部