「株式交付」活用の手引き|編集部おすすめの1冊

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数あるM&A専門書の中から、新刊を中心にM&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。選書の参考にしてみては?

「株式交付」活用の手引き 金子登志雄 著、中央経済社刊

「株式交付」は3月に施行された改正会社法で、M&Aの新たな手法として盛り込まれた。政府の成長戦略の一翼を担い、企業再編の促進が期待されている。デビュー直後で、活用事例はまだ限られるが、その使い方やメリットについて実戦的に解説したのが本書。会社法専門のベテラン司法書士がマニュアル仕立てで著した。

合併、株式譲渡、事業譲渡、株式交換、株式移転、会社分割…。いずれもM&Aの代表的な手法だが、ここへ加わったのが株式交付。2001年に事業分離のための新手法として会社分割が導入されて以来、実に20年ぶりのニューフェースだ。

買収対価として自社株式を用いることができる制度にはこれまで株式交換(1999年導入)があった。ただ、株式交換は完全子会社化(持ち株比率100%)を目的にする場合にしか使えないのに対し、株式取得が50%超~100%未満の範囲でも自社株式を対価として子会社化できるのが株式交付。このため、株式交付は「部分的な株式交換」と位置付けられる。

本書は「株式交付とは何か」「株式交付計画」「株式交付と会計処理」「株式交付の手続き」の4章で構成。全編Q&A(合計45)形式で、順を追って、株式交付の基本や実務上の流れをなどを要領よくまとめている。

実際、株式交付はどういうケースで使われるのだろうか。著者は仮想事例として、「上場企業による事業多角化」「合弁等の解消」「内紛の解消」「グループ内再編」など7つのパターンを提示。既存の手法と比較しながら、株式交付の使い勝手を説明している。

全100ページの約半分を割いたのは第4章「株式交付の手続き」。日程表の作成から、事前協議と根回し、株式譲渡申し込みの勧誘は必要かどうか、反対株主の買取請求手続き、債権者保護手続き、効力発生日・登記までの流れを押さえられる。事前開示書面、株式の譲渡契約書、書面決議による議事録、株主総会議事録・株主リスト、登記申請書面などの書式例も実務者には重宝する。(2021年8月発売)。

文:M&A Online編集部