「中小企業の事業承継 規模の制約とその克服に向けた課題」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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「中小企業の事業承継 規模の制約とその克服に向けた課題」堀越 昌和著、文眞堂刊

著者は2009年に社会人大学院生として東北大学に入学したあと、熊本学園大学を経て、福山平成大学経営学部准教授に就任。この間、一貫して中小企業の事業承継の研究に取り組んできた。

「中小企業の事業承継を研究するにあたって、規模の問題は無視できないのだろうか」という疑問が研究の出発点であり、こうした疑問を解決するための研究の成果をまとめたのが本書だ。

中小企業の事業承継

研究の結論として、中小企業がその経営特性から生じるさまざまな規模の制約性を克服し事業承継を実現するためには「経営者の引退時期と引退後の役割の明確化」「経営者と後継者の関係性のマネジメントを中心とした計画的な準備と実践」「経営者の意識と対応を促すための外部のサポートや働きかけ」の三つの課題に対処することの重要性を指摘。

こうした課題について経営者や後継者がどのように対処したのかを、中小企業4社の具体的な事例を本書の半分ほどのページを割いて詳しく紹介した。

3部構成となっており、第3部(第9章~第11章)がこの事例紹介で、第1部(第1章~第4章)で中小企業の事業承継が問題とされる経済社会的な背景と、問題の解決に向けた政策展開について概観し、第2部(第5章~第8章)では中小企業の事業承継に関する学術的な議論の動向と課題を検討した。

学術的な書籍である一方、著者が「規模が小さいがゆえに生じる事業承継問題に悩み、その解決に尽力する、すべての中小企業の役に立てれば幸いである」としている通り、企業の具体的な事例紹介などは、中小企業経営者の参考になる。(2021年3月発売)

文:M&A Online編集部