数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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「個人M&A 大全」 寺嶋 直史ほか3名著、スタンダーズ・プレス刊
政府は2018年に「人生100年時代構想会議」を立ち上げ、長寿社会のあり方をまとめた。当時の日本人の平均寿命は84.21歳であり、人生100年時代の到来はそれほど先のことではなさそうだ。
一方、2021年4月には、70歳までの就労機会確保を企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法が改正され施行された。
これら状況を考えると70歳から100歳までの30年間は年金生活ということになる。年金だけで生活できる人はいいとして、そうでない人はどのようにして年金以外の収入を得ればよいのか。
この問題に著者が出した答えがM&Aだ。企業経営者として生きていくのは、金銭面だけでなく、生きがいややりがいにもつながるため生涯現役で働ける環境を作るべきだと主張する。
本書は、サラリーマン向けに「個人M&A」の詳しい内容と実践方法を解説したもので、第1章では個人M&Aが増える背景と、サラリーマンが個人M&Aにチャレンジする意味や可能性を探った。
第2章では大企業とは異なる中小企業の実態について触れ、中小企業の帳簿上の貸借対照表(BS)は実態とは異なることが多いため、実態BSを確認しなければ財務基盤を明確にすることは難しい、などの注意を促した。
第3章では準備が不十分なまま個人M&Aに手を出して失敗した事例を取り上げ、失敗の主な原因と回避するための方法に言及。買収企業の事業の中身を把握できていないケースや、経営手法を知らないケース、さらにビジョンが明確でないケースなどを取り上げ、対策を示した。
第4章ではM&Aのプロセスや買収価格の算出方法(企業価値評価)、買収後の企業統合プロセス(PMI)などを紹介。
第5章では企業買収前に押さえるべき企業特性を、第6章では企業買収直前に行う強みと課題の把握について、第7章では中小企業経営で押さえるべき重要ポイントをそれぞれまとめた。
そのうえで、個人M&Aにはリスクがあるため「自分は何ができるのか」「どうしたいのか」「どうなりたいのか」を真剣に考えて決断することが大切と締めくくっている。
100年の人生をどのように生きるのか。読み終わったあとに、M&A以外の答えにたどりつくのも、ありだろう。(2021年4月発売)
文:M&A Online編集部