「Exit(イグジット)」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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『Exit イグジット』 相場 英雄著、日経BP刊

超金融緩和政策に危機感を持つ日銀OBが、日銀と政府の経済政策を批判し、新たな提言を打ち上げる。こうした行為をクーデターと呼び、クーデターに協力する者、クーデターを抑えようとする者の攻防を描いたのが、この作品。

場面は出版社の営業部から始まる。営業マンの池内貴弘は重版(売れ行き好調書籍の再印刷)を迫る書店員と発行部数を絞る営業部長との間で板挟みになっていた。

そんな中、人事で月刊誌である月刊言論構想の記者に異動し、経済分野を担当することになる。

池内は12年前に言論構想社に入社し週刊新時代編集部に配属され、半年間、コンビを組むカメラマンとともに政界要人同士の密会などの決定的瞬間を追いかける張り番の仕事をしていた。

記事を執筆する記者の仕事は初めてであり、新人記者として池内が勉強を重ねるところから物語が動き出す。

Exit(イグジット)

記者となって数日後、池内は仙台の地方銀行に勤める元交際相手の千葉朱美が、池内の叔母が所有する東京都内の土地にマンションを建設することを熱心に勧めていることから、叔母の依頼で千葉と再会することなる。

再会した千葉は、追い詰められた様子で、その後自殺してしまった。池内は千葉が自殺した理由や、東京で営業する事情を調べるうちに、地方銀行が苦境に陥っていることや、日本が未曾有の危機にあることなどが分かってきた。

千葉は自殺する前に、上司の指示で決算対策の裏技について助言を求めて金融コンサルタントの古賀遼の元を訪れていた。自殺の真相を求めて古賀との接触を始めた池内は、古賀がバブル崩壊後、不良債権を抱える企業や金融機関の延命に手を貸したことや政権の中枢とパイプを持つことなどを知る。

古賀の裏の顔に触れた池内は、編集長の指示で古賀の取材を続けるさ中、日銀内の不倫スキャンダルが暴露され、ここから金融、政界を巻き込んだクーデターを巡る攻防が明らかになっていく。

著者は時事通信社に入社後、日銀記者クラブで為替や金利などを担当したあと、兜記者クラブ(東京証券取引所)で証券界を取材した。その経験や知識が随所に現れており、日本がかかえる危機がリアルに伝わってくる。

果たしてクーデターは成功するのだろうか。(2021年1月発売)

文:M&A Online編集部