数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本も紹介する。
“修羅場”というと何か仰々しいと思ってしまいがちだが、大なり小なり誰しもが仕事や人生における修羅場を体験したことはあるのではないだろうか。
取引先との交渉や社内外におけるプレゼンなどの場でも予期せずに窮地に立たされることがある。そして、そこでどんなことが言えるのか、どんな対応をするのかによって、今後の会社のイメージや自分の評判というものが大いに左右される。
本著は、そんなビジネスマンにとって必要とされるコミュニケーションスキル、「説明力」に焦点を当て、説明力を強化してくために押さえておきたい「発信力」「独立力」「情報力」「調整力」の4つのポイントを解説する。
いずれも相互に関係するものだが、一番の土台となるのは「発信力」だと言えるだろう。
ここでは共同通信社で20年以上の記者経験を積んできた小野氏の知見が披露されている。新聞記事の書き方に見られる「5W1H」、When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)の大原則を改めて取り上げ、その形を身につけることの重要性を説く。
的確に相手に伝わるものでなければ、発信をしたとしてもなんの意味もなさない。発信力には伝えたいことを絞り込むことも必要だという。さまざまな情報がバラバラになったままでは、たとえその情報自体に価値があったとしても、結局のところ何も伝わらないからだ。
この「発信力」を土台に、「独立力」「情報力」「調整力」をバランスよく発揮することで、「説明力」は養われていく。その一つでも欠けてしまうと、修羅場をくぐり抜けることはできない。舛添要一元都知事の記者会見や東芝の“チャレンジ”という名の利益水増し計上に対する記者会見など、本著で取り上げられている過去の失敗事例には学ぶことが多い。
備えあれば憂いなし。修羅場になる前に(修羅場にならないことにこしたことはないが)、日々の交渉術のスキルアップとして、この4つの力を身につけて「説明力」を磨いておきたい。
文:M&A Online編集部