「買収効果が出る クロスボーダーM&Aの組織・人事手法」

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本も紹介する。

「買収効果が出る クロスボーダーM&Aの組織・人事手法」

竹田年朗「買収効果が出る クロスボーダーM&Aの組織・人事手法」

グローバル化が進む中、日本企業においてもクロスボーダーのM&Aが加速してきた。本著は、前作「クロスボーダーM&Aの組織・人事マネジメント」に引き続き、クロスボーダーM&Aのテキストともいえる一冊。海外企業を相手にしたクロスボーダーM&Aを成功させるために必要な組織・人事の重要課題と、それに対応するための実務的な取り組み方法を提示している。

タイトルからすると、とても専門的で限定的な分野の本のような印象が強い。M&Aに携わったり、勤めている会社がM&Aに直面したりといった経験がないとなかなか手に取らないかもしれないが、読み進めていくうちにその印象は変わってきた。

もちろん、本著で語られているのは日本企業が抱える海外企業買収の際に直面する問題と解決へのアプローチではあるが、そのいくつかは企業同士の話に限ったものではないように感じた。

例えば、著者が一番の課題だと強調しているのが、買収先の経営者に対するガバナンスの確立。組織統合の大前提であるが、複数のプロジェクトを束ねるような立場のビジネスマンにも必要な要素なのではないだろうか。各プロジェクトマネージャーをしっかりとコントロールし、それぞれのプロジェクトを進行させていく。大なり小なりは別として、組織という形で仕事をし、ある程度の裁量権を持つようになると、ガバナンスという考え方はとても参考になる。

また、本著で取り上げられている現地採用実務の一つに、ハイポジションへの応募者をどのような観点で評価するべきかが紹介されている。

これは人事的な視点であるが、裏を返せば応募者が採用選考の際にどのような点をアピールすればいいのかが分かる。

業界などを問わず、ある程度の社会人経験を積んだ経験者が転職で求められるのは、即戦力としての力量だ。募集ポジションに求められる知見や経験、スキル、人脈などはあって当たり前とされるが、過去に大きな問題に直面した際にどのように対処したのか、自分が持っている能力や知見、情報などを越えた難題をどのように乗り越えてきたのかということも重要視されている。そこで組織における応募者の問題解決能力や行動力、成長のポテンシャルなどが図れるからだ。

人事やM&Aに関わる人はもちろん、何らかの形でマネジメントに関わるビジネスマンにとっても一読の価値がある一冊だ。

文:M&A Online編集部