本格派国際金融小説「国家とハイエナ」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本も紹介する。

「国家とハイエナ」

難しい経済ニュース、特に国際金融という幅広い知識が必要とされるものは、専門用語も多く、どうしても頭に入ってきづらい。しかし、小説というストーリー仕立てで語られると自然と理解度が深まるものだ。本書は、まさにそんな読書体験ができる1冊。

ハイエナ・ファンドとは

黒木亮「国家とハイエナ」

破綻国家の債務を額面の2~3割という破格の値段で買いたたき、額面に金利や遅延損害金を加えた全額支払いを請求する訴訟を欧米で起こしては、投資額の10~20倍のリターンを得るヘッジファンドたち。そのえげつない手法から、“ハイエナ・ファンド”と呼ばれる。

彼らは法律を武器に、合法的に自身の権利を主張し、莫大な利益をあげてきた。もちろん、国家側も簡単にハイエナ・ファンドの要求を呑むことはない。国際金融の現場では、こうした国家とハイエナ・ファンドの攻防戦が展開される中、人道的観点から貧困にあえぐ破綻国家の国民たちを救うべくハイエナ・ファンドの活動を制限しようと各国のNGOも参戦し、三つ巴の戦いが繰り広げられてきた。

本書では、日本ではあまり馴染みのないハイエナ・ファンド、それに徹底抗戦する破綻国家の実態、NGOの活動を紹介。ここ20年の間に実際に起きた出来事をベースに、実在の国家や企業、人物が登場し、ほぼノンフィクションのドキュメンタリーに近い感覚で物語が進んでいく。著者の綿密な取材のもと、ペルー、コンゴ共和国、ザンビア、リベリア、ギリシャ、アルゼンチンといった事例を通して、各国の抱える問題はもちろんのこと、国際経済のダイナミックな局面を垣間見ることができる。

小説内に多く登場する専門用語に慣れるまでは正直大変かもしれないが、専門用語が出てくる度にきちんとした説明があるので安心して読み進められる。

また、巻末には「経済・金融・法律用語集」も付いており、途中で分からなくなっても用語を調べられるのは心強い。ニュースなどで何となく耳にしている言葉も、これでしっかり理解できるはずだ。

文:M&A Online編集部