数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本も紹介する。
今では誰もが知る通信事業会社、ソフトバンク。だが、30数年前は、ITベンチャー企業の一つにすぎなかった。
ADSL事業への参入を足掛かりに、十数年足らずで日本を代表する企業となった急成長の裏には、孫正義社長の最短最速の目標達成術があったという。
本書は、そんなソフトバンク急成長期に孫社長の秘書・社長室長として約8年間携わった著者による1冊。自らも実践してきたという、3つの基本戦略をはじめ、その目標達成術を余すところなく紹介している。
ソフトバンクが数々のM&Aを行ってきたのも、そうした目標達成の戦略に基づいたものであることがうかがえる。
わらしべ戦略ーボーダフォン買収へ
1つ事例を紹介しよう。紹介されている目標達成の基本戦略に「わらしべ戦略」というものがある。文字どおり、わらしべ長者のように、一見すると価値のないように見える“わら”を、別の何かと交換するたびにその価値を大きくし、最終的には本当に欲しかったものを手に入れるというものだ。
ソフトバンクにとっての“わら”は、手間やコストがかかるわりに儲からないADSL事業だった。誰もがやりたがらない事業だったからこそ、競合会社も少なく、500万人の加入者を一気に獲得。その3年後には、この“わら”で固定電話事業者の日本テレコムを買収する。日本テレコムにも500万人の既存ユーザーがいたので、これで一気に顧客数は倍増したのだ。そして、その2年後、これをボーダフォン日本法人買収へとつなげていく。
「わらしべ戦略」は、直接大きな目的や目標を達成しようとするのではなく、小さな目標である中間ゴールをいくつも置いて、確実に達成していくこと。一見、回り道のように見えても、それが最速となるとは、まさに「急がば回れ」だ。
このほかに紹介されている「ナンバーワン戦略」や「くじ箱戦略」といった基本戦略は、ビジネスだけでなく、「海外で暮らしたい」「カフェを開きたい」「理想の相手と巡り会いたい」といった、さまざまな目標達成にも応用ができるという。
時間には限りがあるだけに、このノウハウは一読しておいて損はないはずだ。
文:M&A Online編集部