パールシーの倫理観が世界的な企業とスーパースター伝説を生んだ

タタ家もフレディと同じパールシーの一族だ。パールシーは日常生活での「三徳」を重視し、タタ家も企業経営にゾロアスター教的な倫理観を持ち込んだ。そのため企業倫理に厳しく、「インド企業では当たり前」といわれている汚職を排除。ヒンズー教徒が定めたカースト制度とも無縁で、出自を問わず優秀な人材を抜擢する実力主義の登用をしている。

労働者の待遇改善にも積極的で、タタ・スチールでは1912年の設立時に8時間労働制だったほか、1915年には従業員の無料治療制度、1920年には有給休暇制度や事故補償制度などを導入している。教育、健康、コミュニティー支援などの社会貢献活動にも積極的でインド国民からの人気は高く、過激な左翼ゲリラでさえタタへの攻撃は避けたという。

映画の終盤で伝説の舞台となった「ライヴエイド」の会場に向かうフレディが、対立してきた父親にライブの出演者は誰もギャラを受け取らないと告げて「善き考え、善き言葉、善き行動だよ」と語りかけ、抱き合って和解するシーンがある。

フレディがたどりついたパールシーのアイデンティティーと倫理観が、タタをインド最大の財閥に育て上げたといえる。残り1カ月余りとなった2018年も日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の「報酬隠し」スキャンダルなど、企業の不祥事が相次いだ。

映画「ボヘミアン・ラプソディー」を観て、フレディやタタ財閥が重んじた「善き考え、善き言葉、善き行動」の大切さをかみしめたい。「Too late, my time has come(もう遅すぎる、私の最期が訪れた)」となる前に。

©2018 Twentieth Century Fox Film.(同社ニュースリリースより)

文:M&A Online編集部