【バンク・オブ・ニューヨーク・メロン】知っているようで、知らない外資系金融機関<16>

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外資系金融機関を知るシリーズの第16回は米国のバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)です。商業銀行業務、投資銀行業務と一線を画し、資産管理・資産運用業務に特化した金融サービスをグローバルに展開しています。日本には1970年に進出し、現在、ニューヨークメロン銀行東京支店、バンクオブニューヨークメロン証券、BNYメロン・アセット・マネジメント・ジャパン、ニューヨークメロン信託銀行の4社が活動中です。

米の名門銀行が合併して誕生

BNYメロンは2007年、バンク・オブ・ニューヨークとメロン・フィナンシャルが合併して誕生しました。いずれも米屈指の名門銀行として歴史と実績を積み重ねてきました。

バンク・オブ・ニューヨークは1784年に発足し、全米最古の銀行とされます。日本は10代将軍・徳川家治の治世の最中。アレクサンダー・ハミルトンが創業しました。後に合衆国憲法の起草に携わり、初代財務長官を務める人物です。米の10ドル紙幣に描かれているほどです。

一方、メロン・フィナンシャルは1869年にトーマス・メロンがペンシルベニアに設立したメロン銀行を起源としています。トーマスの息子、アンドリューは世界恐慌時に財務長官の任にありました。メロンと聞いて、ピンとくるかもしれませんが、モルガン、ロックフェラーと並ぶ米3大財閥の一つとして知られています。

バンク・オブ・ニューヨークは米を代表する信託銀行として発展を遂げましたが、メロン・フィナンシャルとの合併に先立つ2006年、大胆な事業の入れ替えを断行。長年手がけてきたリテール(個人・中小企業)向けの銀行部門とJPモルガンチェースの法人向け信託部門を事業交換したのでした。競争が激化するニューヨークでのリテール業務から撤退すると同時に、法人向け信託での地歩を盤石にするのが狙いでした。

メロンも2000年代初めに銀行部門を売却する決断をしています。社名から「銀行」をなくし、成長分野の資産運用部門に経営資源を集中しました。

資産の運用・管理で世界最大級

こうした両社が一体化して発足したのがBNYメロンです。世界の100を超える市場で機関投資家、企業、個人投資に対し、主に資産の運用と管理に関するサービスを提供しています。資産運用残高は約200兆円、管理資産残高は約3700兆円と世界最大規模を誇っています。

では日本での活動はどうでしょうか。

日本で銀行・証券・信託・アセットの4拠点体制で活動中

在日拠点を置くビル

BNYメロングループで銀行部門の在日拠点がニューヨークメロン銀行東京支店です。日本では1970年に前身行の一つ、アービン銀行が東京に駐在員事務所を開設したのが始まり。1973年に同行東京支店に昇格し、法人向けに貿易金融や送金、外為業務などのサービスを提供しました。

法人信託部門を担うニューヨークメロン信託銀行は1985年にスタートしました。JPモルガンチェースの流れをくみ、先に述べたように、本国での事業取得を経て、2009年に現在の社名になりました。2018年3月末の受託残高は約1兆4000億円。有価証券の保管・管理を行うカストディ業務で強みを発揮しています。

バンクオブニューヨークメロン証券(旧バンクオブニューヨーク証券)は2006年に設立。ADR(米国預託証券)の取り扱いで定評があります。

資産運用ビジネスを手がけるのはBNYメロン・アセット・マネジメント・ジャパン。投信委託業務や投資顧問業務を通じて20年の実績を持ち、日本での受託資産残高は約3兆4000億円(6月時点)といいます。

BNYメロンの在日4拠点はいずれも東京駅前の丸の内トラストタワー本館にあります。ここには同じ米国の金融大手、ウェルズ・ファーゴも銀行、証券の2拠点を構えています。

在日外資系金融機関の多くは株式・債券の引き受けやM&A仲介などの投資銀行業務を主力に据えていますが、資産の管理・運用に特化した金融サービスのスタイルは特徴的といえます。リスク分散と海外投資の重要性が増す中、BNYメロンへの期待は高まりそうです。

ただ、国内での知名度について一般にはまだまだといったところです。2011年からは、車いすテニスプレーヤーでパラリンピック2連覇の国枝慎吾選手のスポンサーを務めるなど、日本での社会貢献活動に力を入れています。

文:M&A Online編集部