活動期に入る「ベネッセ」新規事業創出M&Aに1000億円投入

alt
写真はイメージです

ベネッセホールディングス(HD)<9783>は2020年4月に、社会人向け短期集中型英会話教室などを展開するスタディーハッカー(京都市)株式の50.1%を取得し子会社化する。 

ベネッセHDはリカレント教育(社会人の再教育)を、中長期的な注力分野と位置付けており、スタディーハッカーの子会社化で同分野を拡充する。子会社化は2012年の学習塾のアップ(兵庫県西宮市)以来8年ぶり。 

ベネッセHDは2023年3月期を最終年とする5カ年の中期経営計画で教育、介護に次ぐ第3の柱を創出するためのM&Aに500億円-1000億円を投じる計画で、今回の子会社化が呼び水となってM&Aの活動期に入りそうだ。

拠点展開を加速

スタディーハッカーは2010年に医学部や難関大受験の専門予備校としてスタート。予備校での効果的な英語学習法を基に、2015年に90日間という短期間で英語力の大幅アップをサポートする社会人向けの時短型英会話教室「ENGLISH COMPANY」をオープンした。 

さらに2018年12月には英語学習の自習コーチングに特化することで価格を抑えたコースも投入。これらサービスの利用者数は2015年からの5年で8000人を超えた。 

グローバル化の進展などに伴い語学ビジネス市場は拡大を続けており、特に短期集中型の英会話スクールにはニーズがあるという。ベネッセHDは同ニーズを取り込み、リカレント教育での英語教育サービスを拡充するとともに、スタディーハッカーの講師採用強化や拠点展開の加速などに取り組む。 

新規事業で売り上げ、利益の10%を

ベネッセHDが取り組んでいる2019年3月期から2023年3月期までの5カ年の中期経営計画では、最終年の2023年3月期に売上高6000億円、営業利益600億円の目標を掲げている。 

この目標数字の10%超は、M&Aによって立ち上げる新規事業で上げる予定で、既存事業との親和性が高い健康や生活などの領域で候補企業を探索するという。 

ベネッセHDは1955年に岡山市で福武書店として創立。模試や通信教育などで事業を拡大し、1993年には語学事業を展開する米国のベルリッツインターナショナルインクをグループ会社化した。 

その後2003年に広告事業の進研アド(大阪市)を、2006年に予備校のお茶の水ゼミナール(東京都千代田区)を、2007年に教育事業の東京個別指導学院(東京都新宿区)を次々に子会社化し業容を拡大していったが、2012年のアップ以降は子会社化の動きは影を潜めていた。 

M&Aによって新規事業の立ち上げを目指す健康や生活などの領域には、どのような企業が埋もれているだろうか。

ベネッセホールディングスの沿革と主なM&A
1955 岡山市に福武書店を創立。中学向けの図書、生徒手帳発行を開始
1962 高校生向け関西模試を開始
1969 高校生向け通信教育講座の通信教育セミナを開講
1993 ベルリッツインターナショナルインクをグループ会社化
1995 ベネッセコーポレーションに社名を変更
1995 大阪証券取引所市場第二部、広島証券取引所に上場
1997 大阪証券取引所市場第一部に上場
2000 東京証券取引所市場第一部に上場
2000 介護付高齢者向けホームの伸こう会の経営権を取得
2001 ベルリッツインターナショナルインクを完全子会社化
2003 進研アドを子会社化
2005 アビバをグループ会社化
2006 お茶の水ゼミナールを完全子会社化
2007 東京個別指導学院を子会社化
2009 ベネッセホールディングスに社名を変更。新設分割会社ベネッセコーポレーションを設立
2010 ボンセジュールを子会社化
2010 アビバを譲渡
2012 アップを子会社化
2020 スタディーハッカーを子会社化(2020年4月に実施予定)

文:M&A Online編集部