物価高で「賃上げ」加速か インフレ手当もジワリ広がる

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サントリーホールディングス(大阪市)が、月収の6%の賃上げを計画しているほか、日本生命保険(大阪市)も7%の賃上げを表明するなど、大手企業に賃上げの動きが現れてきた。日本生命は待遇改善による定着率の向上が狙いだが、サントリーは物価高に対応したものだという。

一時1ドル150円台に達した円安によって原材料やエネルギ-の価格が上昇し、国民生活に影響の大きい食品や飲料などの値上がりが続いている。

日銀の事実上の利上げによって1ドル131円にまで円高が進んでいるが、物価高が抑えられるまでには時間がかかるため、生活を向上させるためには賃上げが不可欠。理由はともあれ大手企業の賃上げは、他企業の賃上げを誘引する可能性がある。賃上げの動きを見てみると…。

新卒の年収を500万円に

全国で18店舗のホテルを運営するコアグローバルマネジメント(東京都中央区)は2023年1月から、新卒を含む正社員らの最低給与を月額26万円に引き上げる。

それまでの最低給与を公表していないため、上昇率は分からないが「インフレ傾向に加え、異業種からの転職の受け入れも考慮し最低給与の引き上げを決定した」としている。

賃上げによって、商品やサービスの品質を高めるとともに、地域貢献や企業価値の向上などを目指すという。

ショートムービーマーケティングを手がける広告代理店のTORIHADA(東京都渋谷区)は、2023年新卒の初年度年収を500万円に引き上げる。

既存社員については2022年10月に引き上げを実施しており、いずれも引き上げ率などは公表していないものの「同給与水準は業界の最高水準」としている。

物価高に対応した措置で、同時に報酬水準を上げることで優秀な人材の獲得や企業成長を目指すという。

一時金や月額手当の支給も

広島を中心に土木、建築工事を請け負う建設会社の鴻治組(広島市)は12月に、物価高に対応して「インフレ特別手当」10万円を支給した。今年創業140周年を迎えたことから、社員に報いる意味も込めて、支給を決めたという。

同社は地場建設業でトップクラスの報酬水準を目指しており、今後も報酬制度の改善を続けていくとしている。

帝国データバンク(東京都新宿区)の調査(1248社が回答)によると、従業員に特別手当(インフレ手当)を支給した企業が6.6%あり、支給を予定している企業は5.7%、検討中の企業が14.1%あった。インフレ手当の平均支給額(予定、検討中を含む)は一時金が5万3700円、月額手当が6500円だった。

日本労働組合総連合会(連合)は2023年の春闘で、5%程度の賃上げを求める方針を打ち出しており、日本経済団体連合会(経団連)も物価高を踏まえて会員企業に賃上げを呼びかけるとしている。どうやら2023年は賃上げの動きが加速しそうだ。

文:M&A Online編集部