コンビニ販売は不調?ベースフード上場後はサブスクリプションがカギに

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完全栄養食BASEFOODシリーズを販売するベースフード<2936>が、2022年11月15日にグロース市場に新規上場します。テレビCMで一般消費者への認知度を高め、コンビニへの販売網を急拡大しました。2022年2月期の売上高は前期比264.2%増の55億4,500万円と急成長している会社です。

ただし、4億6,000万円の経常損失(前年同期は1億5,800万円の経常損失)を出しており、全く利益が出ていません。主な赤字要因は広告宣伝費。マス広告で認知を上げている割に、小売店での販売が振るいません。

ベースフードの販売チャネルはサブスクリプション(自社EC)に収れんする可能性が高く、いかにして会員数を伸ばすのかが今後の成長のカギを握っています。

この記事では以下の情報が得られます。

・ベースフードの業績
・ベースフードの事業内容

コンビニでの販売個数は1日1個程度か?

ベースフードが扱っている商品は大きく3つに分かれています。「BASE BREAD」「BASE PASTA」「BASE Cookies」です。主力が「BASE BREAD」で全体の87.9%を占めています。「BASE PASTA」は5.4%、「BASE Cookies」は6.7%と少数。栄養食品や健康食品は新規参入が多く、競合に市場を奪われる可能性があります。ベースフードの売上が「BASE BREAD」に大きく依存している点は弱点の一つと言えるでしょう。

ただし、コンビニエンスストアやドラッグストアなどの小売店で扱いやすい形態だったため、販売チャネルを一気に広げることができました。

2021年2月末時点での取り扱い店舗数は9,143店舗でしたが、2022年8月末には17,878店舗まで急拡大しています。

2022年2月の売上高は55億4,500万円。2022年2月期は上半期だけで45億8,400万円に達しています。

※新規上場申請のための有価証券報告書より筆者作成

売上高の伸びは凄まじいものがありますが、2018年2月期から5期連続で利益が出ていません。

ベースフードは2022年2月1日に初のテレビCMを福岡県で放送しました。福岡県や佐賀県のファミリーマートの一部で「BASE BREAD」の取り扱いを開始したため。これまでWebを中心に販促活動をしていましたが、2022年2月期からマス広告で広く認知を獲得しています。

2022年2月期の広告宣伝費は16億1,800万円。2021年2月期3億2,300万円の5倍に膨らみました。多額の広告費はベースフードの赤字の主要因です。

※新規上場申請のための有価証券報告書より

2023年2月期も同様に広告費が膨らんでいるものと考えられます。

しかし、ベースフードの卸販売が上手くいっているようには見えません。2022年2月期は売上高全体の69.2%が自社ECによるものでした。ベースフードの2023年2月期上半期の売上構成比率を見ると、卸売は2割程度に留まっています。

※新規上場申請のための有価証券報告書より

2023年2月期上半期の卸売による売上高は9億1,100万円。17,878店舗で単純計算すると、1店舗当たりの6カ月の販売額は5万円。コンビニでの「BASE BREAD」の販売価格は250円ほど。1ヶ月の販売個数は33個になる計算です。1日1個程度しか売れていません。

この試算値は半年間フル寄与している店舗が全てではありません。しかし、この半年間で店舗数が急増することは考えにくく、大きな差は生じないでしょう。商品回転率が26.2回(経済産業省商業統計より)と高いコンビニにおいて、1日1~2個程度の販売個数では長く陳列される可能性は低いと考えられます。

卸売部門を伸ばすのであれば、マス広告での認知を更に広げる必要があり、赤字を拡大することにもつながりかねません。上場後の大赤字は株主の反発を招きます。中長期的には、主力となる自社ECのサブスクリプションへと事業は収れんするものと予想できます。

売上高100億円で捻出できる広告費は10億円前後

ベースフードの2022年8月末時点でのサブスクリプション会員数は137,620人。前事業年度末比で33.4%も増加しています。半期の自社ECの売上高を会員数で除して算出した1会員当たりの単価は22,000円。1人当たり月に3,700円支払う計算です。この金額はサブスクリプションサービスの継続コースとほぼ同等の金額であることから、会員1人当たりの単価を変えるのは難しいと考えられます。

サブスクリプション会員の継続率は93.2%。SaaSの平均的な解約率は5%程度と言われており、解約率の低減に注力するのも得策ではないでしょう。

そうなると、ベースフード成長のカギはいかに会員数を伸ばすかにかかっています。

ベースフードの原価率はおよそ40%。広告費を引いた販管費率もおよそ40%です。売上高100億円で、10%程度の営業利益を出すと考えた場合、広告費として割ける試算値は10億円です。

2022年2月期に投じた広告費の6割程度。利益を出すことを優先した場合、売上高の成長が抑制されるのは間違いないでしょう。

今回の上場ではベンチャーキャピタルのグローバル・ブレイン(東京都渋谷区)や楽天キャピタル(東京都世田谷区)などによる売出株もありますが、公募株270万株余りを新規に発行して資金を調達します。十数億から数十億円の資金を調達するものと予想できますが、それによってどこまで会員数を獲得できるか。注目が集まります。

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