鳥取県の中央部、倉吉市に本社を置くバルコス<7790>。女性向けのハンドバッグや財布のメーカーで、通販でお馴染み、「チルコロ」という緑色の長財布は根強い人気がある。このバルコスが2020年10月にTOKYO PRO Market(TPM)に上場を果たした。
同社は2021年1月15日、全額出資でファッションニュース通信社という新会社(資本金1000万円)を設立すると発表した。WEBを利用してファッション情報を提供するメディア事業と、ファッションブランドを集積したEC(電子商取引)構築などのプラットフォーム事業を目的とする。
これに先立ち、2020年12月には、倉吉本社内にカフェ「Barcos Coffee」をオープンした。カフェ運営を通じて、ライフスタイルを豊かにする新たな付加価値の提案を目指すという。
2020年7月14日には通販大手、楽天の「ハンドバッグ部門デイリーランキング等」で1位を獲得した。モデル・タレントとして活動するゆきぽよ(木村有希)さんプロデュースのバッグブランド「Velix(ヴェリクス)」の一般販売に先立ち、先行予約販売を行ったことが奏功した。
地方のものづくり企業というと、「職人が逸品をつくる」イメージがあるが、同社は「つくる」だけでなく「売る」ことも重視している。「創る、造る、売る」が経営理念だ。
バルコスの事業はクロスメディアと店舗、海外の3つに分かれている。
クロスメディア事業はテレビ、雑誌、新聞、さらにサイトやSNSを通じて広告を投入し、注文を獲得する。注文は主にコールセンターで受けている。もちろんECにも力を入れている。
店舗事業は文字どおりの店舗で商品を販売する事業。ブランドを軸とした情報発信ができるようショールーム化することに主眼を置く。倉吉本社の「Barcos Coffee」もその一環にほかならない。現在、東京、大阪をはじめ、全国の主要都市に20を超える店舗を展開する。
海外事業は米ニューヨークやイタリア、フランスで開かれるファッションイベントへの参加が柱。欧州のみならず、アジアのバイヤーから注文を受けるBtoBビジネスに取り組んでいる。ミラノで開かれる世界最大規模のハンドバッグ展示会「MIPEL」には継続的に参加し、これまでに3回デザイン賞などを受賞している。パリでは年4回催される「PREMIERE CLASSE」に出展してきた。
足元の業績は新型コロナ感染の影響拡大を免れない。だが、社員40人ほどの小所帯ながらもタイプの異なる販路を3つ持つのが強み。店舗販売が振るわなくても、通販が堅調であればそのマイナス分を補ってくれるといった具合だ。
◎バルコスの直近2期の連結業績は下表のとおり。(単位100万円)
2019年12月期 | 2020年12月期(予想) | |
売上高 | 4,453 | 3,085 |
営業利益 | 472 | 311 |
経常利益 | 451 | 295 |
バルコスの「創る、造る」の分野、製造体制については、これも企画デザインとサンプル製作、商品製作(本製作)の3段階に分けている。
まず、企画デザインは自社、日本で行う。サンプル製作については中国・広州にある自社のサンプル生産専門工場で手がける。本生産は国内のみならず海外も含めて外注するファブレス体制を確立。量産工場を持たないファブレスであれば、自社で多額の設備投資を避けられる一方、的確な外注管理能力が欠かせない。
今後、バルコスではECの海外展開、つまり“越境ECショップ”事業の拡大をもくろむ。「越境」はポストコロナを見据え、「今とは異なる分野・地域・場所での“リアル”を実体験する」という意味で重要なキーワードになる。それはバルコスという会社や事業、ブランドにも、そこで働く社員にもあてはまるはずだ。
「倉吉から世界へ」は同社の合言葉だが、それを実現するには「越境」をどれだけ身近に体現できるかにかかっている。TPM上場も、その一里塚といえるだろう。
文:M&A Online編集部