【バークレイズ】知っているようで知らない、外資系金融機関まとめ<7>

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日本でのオフィスは東京・六本木に

外資系金融機関を知るシリーズの第7回は英国が誇る世界的な総合金融グループの「バークレイズ」です。300年を超える歴史を持ち、HSBC(香港上海銀行)、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド、ロイズ・バンキング・グループと並ぶ英国4大銀行の一つです。一般的な商業銀行業務から、投資銀行業務、証券、クレジットカード、資産管理・運用まで広範な金融サービスを手がけ、欧米をはじめ、中東、ラテンアメリカ、アジア、アフリカなど世界40カ国・地域以上で活動しています。グループの社員数は8万人に及びます。

日本進出から間もなく50年、かつては東証上場も

バークレイズのロゴ
photo by Howard Lake:バークレイズのロゴ

バークレイズは1690年、ジョン・フリームとそのパートナーのトーマス・グールドという人物が金匠銀行家としてロンドンのロンバート通りで銀行業務を始めたのが起源とされています。「シティー」の呼び名で知られる金融街の中心に位置するのがロンバート通りです。金匠とは両替商を兼ねる金細工業者のことで17世紀のロンドンで栄え、金匠が発行する手形が後の銀行券(紙幣)の先駆けになったとされています。

日本では1969年に東京駐在員事務所を開設して以来、すでに50年近い歴史があります。変遷を経て現在、バークレイズ証券、バークレイズ銀行東京支店、バークレイズ投信投資顧問が活動しており、約500人の社員を擁します。3社のオフィスはいずれも六本木ヒルズ森タワー31階にあります。

日本での中核事業は投資銀行業務。具体的には、大企業や機関投資家、政府・公共機関などを対象に株式・債券の引き受けによる資金調達のアレンジやM&A(企業の合併・買収)の仲介、リスク管理ソリューションといった金融サービスのことです。こうした投資銀行業務はバークレイズ証券が中心となり、バークレイズ銀行東京支店と連携して行っています。

もうひとつの柱がマーケッツ業務。金融商品の組成や販売、リサーチ、株式、債券や外為・オプションなどのトレーディングを主力としています。

これらの業務を担うバークレイズ銀行東京支店は1972年、バークレイズ証券は1987年(当初は東京支店、2006年に日本法人化)にそれぞれ営業をスタートしました。この間、1986年にはバークレイズが英国の銀行として初めて東京証券取引所に上場しました。

一方、バークレイズ投信投資顧問は、バークレイズグループの資産運用部門の日本拠点として2007年に設立され、投資信託の設定・運用、投資助言・代理業務を手がけています。

日本でのバークレイズの歩み
1969 東京駐在員事務所を開設
1972 バークレイズ銀行東京支店を開設
1986 バークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行(BGI)を設立
1987 BZW証券会社(現バークレイズ証券)東京支店を開設
1988 バークレイズ・キャピタル証券東京支店に改称
2006 日本法人化に伴い、バークレイズ・キャピタル証券とする
2007 バークレイズ投信投資顧問を設立
2008 BGIを住友信託銀行に譲渡
2012 バークレイズ・キャピタル証券から、バークレイズ証券に商号変更

リーマン・ブラザーズの北米部門を買収

日本には1986年設立で資産運用・管理業務を展開するバークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行(BGI)がありましたが、BGIは2008年に住友信託銀行(現三井住友信託銀行)に吸収合併され、姿を消しました。この年、残念なことに1986年以来の東証上場も廃止しました。

2008年といえば、リーマンショックです。米大手証券のリーマン・ブラザーズがサブプライムローン問題による巨額損失で経営破綻し、世界的な金融危機のきっかけとなりました。破綻後、そのリーマンのお膝元である北米部門を買収したのがバークレイズだったのです。投資銀行のグローバルプレーヤーとして、もう一段のステップアップが目的でした。ちなみに、リーマンのアジア(韓国除く)・太平洋部門と欧州・中東部門を買収したのは野村ホールディングスです。

日本でのM&A業務には拡大余地

投資銀行業務を代表するM&Aアドバイザリー業務の日本における取り組みはどうでしょうか。調査会社トムソン・ロイターがまとめている日本企業のM&Aに関するアドバイザリー業務の年間ランキング(上位25社。公表ベース)をみると、過去5年で2016年の16位(金額1兆2364億円、案件13件)を除き、ランキング外となっています。

この2016年にはアサヒグループ・ホールディングスによる中東欧5カ国ビール会社の大型買収(8900億円)があり、バークレイズは買い手側のアドバイザーを務めました。このほか、2013年、オリックスがオランダの資産運用会社ロベコ・グループを2400億円で買収した際は、売り手側のアドバイザーについています。欧米での実績に比べ、日本での存在感は全体として今一つのところもありますが、本邦企業の海外M&Aが活発化する中、顧客開拓余地は大きいといえます。

photo by Reading Tom:バークレイズが命名権を持つ米ニューヨーク市内の多目的ホール「バークレイズセンター」

文:M&A Online編集部